南無妙法蓮華経 南無妙法蓮華経。 何や 小河童か。 小河童 言うな。 おっさん 牛蒡 まだか?うわ 親河童…。 何してまんねん!材木屋はん人の家の板の間たたいてあんたそれで よろしおまんのか?ここは 神さんが宿ったはるとこだっせ!…人の家の板の間て店賃 払てから言うてもらおか!道理や。 親の反対 押し切って蝶子はん 学校出たら曾根崎新地のお茶屋さんへ入りおちょぼになりました。
何や 小河童か。 小河童 言うな。 相変わらず 貧乏くさい顔やのう!ほっといてんか。 がたろ横丁の小金持ち風情が出入りするとこや おまへん。 よっ 維康柳吉!わいは ええわ。 ほな ひとつ色問答でもせえへんか?色問答いいますのんは?赤やったら赤い色を3つ重ねんのや。 どないなふうに言うんでっか?「金時が鯛ぶら下げて火事見舞い」てな事 言うて。 お父ちゃんが赤い人参天ぷらにしまっしゃろ。 御飯食べやったら お店に言うてお花代 払うてもらわんと…。 けど 一番嫌なんは…貧乏暮らしや。
今日は 生国魂さんのドテ焼きや。 明日は 日本橋で たこ食べよか。 要するに お金の面倒見てくれはるちゅうこっちゃ。 あの人て…維康商店の若旦さんかいな。 「柳吉様。 お披露目の時の祝儀やら衣装やら皆 おかあさんに前借りしてしもうてる…。 何でや思う?一人より 夫婦の方がええいう事でっしゃろ?金春さん 三味線のお師匠さんとこにも おりまへん。 わてなこないな日ぃを夢に見た事一遍もあれへんねんで。 何や!あっ あっ!地震や! あかん! あかん!大震災や 大震災!えらい駆け落ちしてもたこっちゃ。
いえいえ!毎度おおきに!ホンマに もう!おきんさんのお宅はこちらでっしゃろか?どちらさんでっか?梅乃屋に金春という名前で出とりました蝶子といいます。 大阪一の芸妓にはなれなんだけどわては…。 お兄さんは 生まれた時からこの維康商店の跡継ぎと決まったお人。 昆布?上等の昆布をな 細かく刻んで山椒の実と一緒に鍋入れて濃い口醤油をたっぷり使てな松炭のとろ火でとろとろ煮詰めんねん。 たった三月でか!あんたにいつまでも貧乏さしたら「そやさかい芸妓みたいなもんは」てお父さんにばかにされまっしゃろ。