自宅蟄居を命じられた松陰が何をやっても兄にかなわんかったのに大組の来原良蔵様に気に入られてから学問にも熱が入っとるみたいで。 寅兄様の塾からお家のお役に立つ方が現れればまたとない忠義の証しとなるんでは？となれば寅次郎の罪も いずれ許され…。 優れた人物を選んで江戸へ遣わせという意見書じゃ。 江戸へ乗り込もうという者がフグの毒や禁令なんぞに臆してはおられませんから。 江戸？ 稔麿は 江戸へ行くんか？まだ決まった訳では。 ですが 玉木文之進様のお口添えでいずれ遠からず。
私が？今 何かあったら稔麿さんの江戸行きも 塾の評判も何もかも水の泡。 お待ち下さい！お願いでございます！調子っ外れの三味線に聞き覚えがあるぞ！周布様！ご重役の周布政之助様じゃ。 江戸屋敷のお勤めを願い出ております。 よろしくお願い申し上げます！うむ！お家のお役に立ちたいというその意気じゃ よし！「吉田松陰の弟子を江戸にやる訳にはいかぬ」。 塾生は 江戸にやれん？屈せず 稔麿を断固 江戸へやるべきです！稔麿の江戸行きには不満やったんじゃないんか。
明倫館書物蔵ご視察の日が決まった。 近頃のお主らの学び方はなっておらん！なお一層 専心せよ！稔麿さんが？塾に泊まり込んどるんかなって。 江戸から戻ったばっかりじゃいうんであっちの話を いろいろ聞かせてもろうとったんじゃ。 火事？江戸は萩とは比べもんにならんほど家が立て込んどる。 江戸の人は 物見高いけぇ火事見物も おいい。 稔麿さんの話今まで聞いた どの話より江戸の町がよう見える。 明倫館を差し置いて江戸へ行こうっちゅうんは。 人の金で女と遊び人の金で江戸へ行くか。