ん…? 西鶴…? 芭蕉…?みんな 親しげで名で呼ぶくせして何で わしだけ近松って呼ぶんでっか?何で 名字で呼ぶんでっか?そこ!?しょうもない事 気にしてんとさっさと 傑作 書きなはれ!♪「嘆き疲れた宴の帰り」♪「これで浄瑠璃も終わりかなとつぶやいて」あの近松です。 この親不孝者が。 うそか ほんまか 知らんけど孝行者にあやかれる孝行糖なる飴が飛ぶように売れとりますせんならんなあ 親孝行そう。
徳兵衛!♪「おいしいで 売ったろか」♪「一回 食うたら やめられへん」♪「それ 不孝糖 不孝糖」♪「おやおやおやおや親不孝の不孝糖」あかん。 浄瑠璃作者として売り出し中の近松門左衛門。 そして 結局いまだ 一文字も書けへんわしは昼間っから 元禄のキャバクラで現実逃避してる次第わしの前に現れて こう言うた。 わしのために浄瑠璃の筋 書いてくれへんか」。 はあ~!これの前と後では浄瑠璃の有り様が違うとまで言われた傑作や。 そない意地悪せんと。 う~ん? 誰が意地悪や?へえ。
不孝糖 売った客に誘われて店 上がって どんちゃんして勘定 押しつけられて逃げられたっちゅうだけの話やないかいハッハハ~! さっぱり わやでっせ。 おつきあい頂けませんか?近松門左衛門先生。 あんた そない思うか?はい!藤十郎はんの具合が悪うなって思うように舞台に立てんようになりわしは歌舞伎を書く道理を失うた。 それが証しに この九平次先生が座付きになる事を承知して下さりますれば…。 近松門左衛門!ついに 打ち切りや。
先生のような優れた浄瑠璃作者が現れたのですから土地柄がよいに違いありませんよ。 へっ?わし やっぱり人形浄瑠璃 捨てられまへん。 ああ おった おった! ハッハハ!買うてきましたで !アッハハハ!今? この間で?当たり前やけど わいかて意地や。 近松門左衛門!その 何ちゃら衛門がな 買うてきたらわいと一緒に不孝糖 売るっちゅうてな。 傑作を世に送り出して近松門左衛門の名を残すんや!昆布じめで よろしか?聞いてへんのかい!あっ 黒田屋さん。