井伊家当主の一人娘おとわには亀之丞といういいなずけがおった。 もはや 戦しかあるまい!戦…?左馬助!今川に人質を渡すくらいなら井伊は 戦に及ぶとそう伝えてこい!ご隠居様は ご乱心じゃ。 お前は とわが 一人娘が人質に取られても平気なのか!娘を人質にやりたい親がございますかあ!しかし 人質にやらねば「井伊を滅ぼす 成敗致す」とここに書いてあるのですよ!おとわを差し出さねば井伊は潰されるのです!お前は おとわが 佐名のようになってもよいと言うのか!佐名と同じ目におとわが遭ってもよいと!それは…。
太守様の学問の師で今川の軍師でもあられるお方じゃ。 佐名様にご挨拶をしておいた方がよいと。 佐名様というのは和尚様の妹御でございましょう。 京の公家なども 荒れた都を嫌い太守様を頼って やって来たり。 佐名様は今川に人質として送られそこで 太守様のお手つきとなったのです。 そうなる事を半ば分かっていながら井伊は 佐名様を差し出した。 佐名様に 井伊を恨むなというのは難しうございましょう。 今川には寿桂尼様という方がおられる。 太守様のご生母様でなこのお方も大変 力のあるお方じゃ。
龍王丸様というのはあの子ですか?あの子に勝てば何でも褒美がもらえるのですか?そうじゃ。 はい!龍王丸様!おとわ様!?我と一番勝負をお願い申しまする。 うわあああああああ!あっ!うわっ!龍王丸様!何をする!龍王丸様 褒美を下され!龍王丸様! 我はその褒美がないと困るのじゃ。 ご褒美を頂きたくおとりなしを願いまする!父上! こんなものは勝ちと申しませぬ!何度も何度も勝つまでやめず!こいつはひきょう者にござりまする!蹴鞠をやっておったのです。 和尚様!左馬助伯父様!ご無事だったのですな!ご無事で!うむ。