不器量なくせに化粧もしない 髪はボウボウもう 身を構いもしないでさあ。 この善次郎も前に うちに出入りしていた浮世絵師の一人だ。 名か? それとも 銭か?オランダ国から 絵の注文?へえ。 それが そのシーボルトって先生は北斎先生の絵が好きで世界一の絵師だって言ってるってんで。 おやじ殿はそのオランダからの注文を15枚の絵としそのうち 12枚の下絵をあっという間に仕上げあと この色。
俺が 今 何て いわれてるか知ってるか?「溪斎英泉は 北斎の再来か」だぜ。 ♪「つるつるつん」♪「はあ つるつるつん」♪「はあ」♪「ちりちりちん」善さんは かつては二本差しのお侍だったと誰かに聞いた事がある。 それ以上は 何も知らない吉原一の合奏です。 三流の玄人でも一流の素人に勝る。 なぜだか分かるか?こうして 恥を忍ぶからだ!己が満足できねえもんでも歯ぁ食いしばって世間の目にさらす!悔いてる暇あったらとっとと次の仕事にかかれ。 俺だって お前満足なんざしてねえよ。
付近をたまたま…たまたま 通りすがった故に北斎翁にお取り次ぎを願いたい。 滝沢様?無様よのう!飾北斎が…こんな掃きだめで恍惚としおって。 おやじ殿の事ばっかり考えて…大丈夫だよ。 大丈夫。 じゃ 善さんの住む惣十郎町も…。 善さんの家は 焼け落ちそれから3年生きていると噂は聞くものの姿を見せる事はなかったあの己丑の大火で手前ども西村屋は大事な版木の全てを失いました。 西村屋は「富嶽三十六景」と名付け鳴り物入りで売り出した。