石丸謙二郎演じる商家の旦那これが大晦日から元日にかけてのお噺でございましておつきあいを頂きたいと思うんでございますが。
ほいでな 皆でこう飲んでる時にな今度は ホンマに おなかが痛なってきてなほんでな まあ迷惑かけたらいかんと思てす~っと こう立ち上がるとなその 今いう 一八がな『旦さん どちらへ?』。 『アホな事 言いないなあ』言うて手水へ 歩いていくとな後ろから その一八がず~っと ついてきてな『もう 旦さん この辺でやりなはれもう 百円やのうて よろし。 三十円でも 二十円でも』。 ちょっとゲンの悪い事を言うとな顔に 稲妻が ビカビカ~っとこう走りよんねん。
『何じゃいな お前ら こんなとこで何してんねんな?』ってこない聞いたらな あの国鶴がな『長い間 旦さんにお世話になりました。 夢ん中ではな国鶴が先やったけどホンマは おかんお前が先かも分からん」。 ああ 国鶴姐さん。 「ええ あの寂田の あの… あの…おじさんが これ あの…うちの… お父っつぁんの名前をおり込んで林 松右衛門というのをおり込んで詠を作ってくれはりましたんや」。 「うん?『喉が鳴る』やないのか?『喉が鳴る早 死にかかる松右衛門』」。
「何で電報ですねん ホンマに もう」。 が そこのところへ 昨日約束を致しました又兵衛さんがまあ 葬式の行列を 10人ばかり連れて やって参りますな。 ああ 林 松右衛門てな看板があった。 京都にな御影堂ちゅうのが あってなそこの渋谷藤右衛門ちゅうねんな。 それを省略して縮めると『冥土の死人』とこない言うてんねん。 ああ これな 今 ミナミで売り出し中のな 芸子連中や。 何で こんな正月から えらい目に遭わされな いかんねや?誰が死んだんや?国鶴姐さんか?いや そんなんやったら検番から知らせが来るわな。