家内円満 無病息災。 麟太郎が お城に上がって三月が過ぎ…ふっ ふん!お信。 麟太郎は 納豆を食べているのかしらと思って つい…。 無頼な振る舞いをして麟太郎の足を引っ張ることのないようくれぐれも…。 今日は白鬚大明神に参りますから留守を頼みますよ。 麟太郎が そなたのように道を踏み外さぬよういいお日和で ようございましたね。 何しろ 碩翁様は一代で三百俵から 九千石の御大身になられたお方でございますから。 まあ! 三百俵から九千石!大層な ご出世ですこと。
碩翁様の知己を得れば出世栄達は 思いのまま。 旦那だって あの ご新造が気になってんでしょ?いい女だったもの!何言ってんだ 亭主持ちだぞ。 以前に 俺が 御番入り願いに小普請組御支配の屋敷に日参していた頃戸部殿の名前を聞いたことがあったよ。 長らく 御支配様のもとに通っておりましたがようやく 御番入りが叶いました。 お役目は何だい?御徒士でございます。 俺は それで御番入りをしくじった口だ。 ご奉公に上がったからには麟太郎は 勝家の子である前に若君の家来です。
おや? うちの旦那様が「頭でっかちのつまらぬやつ」だとでも?いえ そこまでは…。 百両借りる当てが出来たぞ!まあ そのような大金 どなたから?井沢屋久右ヱ門さ。 何 言ってんだい!女をもらう掛け合いに女房を行かせる ばかがいるかよ!旦那様は 日頃から ばかなことを尽くしておいでなのですからもう一つ ばかなことが増えたってかまわないじゃありませんか。 旦那様の首を受け取るなんて。 こうでもしないと旦那様は止まらないから…。