具足屋って絵草紙屋の前 通りかかると大勢 人だかりがしてるんで何だろうなと思って かき分けてヒョイと 前へ出たらみんなで 女の人の錦絵 見てた。 そしたら 『今 吉原で一 いや日本で一って言われる幾代太夫だ』って。 『あ~ 吉原の幾代さんですか?それじゃ 吉原へ行ったらこの幾代太夫に会う事ができるんですね?』ってそう言ったらみんな 笑いだしやがった『夢みてえな事 言うな』って『お前みてえな職人の相手なんざしちゃくれねえ』って。
「私が恋煩いだなんて親方に言っちゃ嫌ですよ」。 「恋煩え? 野郎がかい?「違う」。 こういう訳でさぁ吉原の幾代太夫だってんだ」。 「あ~ 親方。 「それも何だっていうじゃねえか吉原の幾代太夫だってな~?俺も 一緒に 行ってやらぁ。 さぁこれから 一生懸命 働きましてあっという間に一年という月日が経ちまして。 「親方 親方」。 「親方に お預けしました金いくらになりましたかね?」。 「何 言ってんですか? 親方。 何 言ってんだぃ 親方1年前に 何て 言いやした?『一生懸命 働け。 親方。
ここに おいでなのは 私が若い時分から お世話になっている野田の醤油問屋の若旦那さんで清蔵さんというがねさぁ 清蔵は一年 恋い焦がれた幾代を初会でもって ピタリと目の前へ座らす事ができる。