今日ご覧頂く「近江源氏先陣館」でありますけど もともとは時代といいますとどうなるんでしょうか?実は これは 大坂冬の陣を素材にしてるんですね。 ところが 江戸幕府をはばかって鎌倉時代に時代を移しまして源氏内部の権力争いという物語に仕立ててあるんです。 大坂冬の陣では真田信幸が 徳川方について弟の幸村は 豊臣について 兄弟が争うという史実がある訳ですね。 そこへ 高綱側の軍師 和田兵衛がやって来て小四郎を返してほしいと盛綱に申し入れます。
その源は 近江路の陣屋の主佐々木盛綱 甲冑の姿引かえて播磨屋! 目礼式礼ゆうゆうと 打通りさて 此度の戦。 事もなげに述べければアノ小児一人なくんば合戦もエエなされぬか然し 此方に不審なるはその童の小四郎を貴殿の子息が生捕らせしは一城をも乗取っとりし如く左程 懇望せらるる小四郎此方にても ちと惜しゅう存ずる。 シテ その頼みとは?その頼みと申すは 最前の囚人拙者が為には甥母人のためには孫の小四郎。
いかにと見やる戸の透き間微妙は孫に打向いノウ 小四郎高綱に別れてから十三年の年月孫ありとは聞いたばかりなつかしさ 会いたさに忘るる隙はなけれ共思うにまかせぬ敵味方。 老母が親身の血の涙 時雨の中の枯紅葉 露より先に ちりぬらん 折からサッと山風の はるかに陣鉦攻太鼓 しおしおと 一間の内へ 入りにける 事こそあれと早足の早瀬ハテ知れた事我子の小四郎をとりかえす。 鎌倉の惣大将 時政公に直見参仕らんと 死にもの狂いのその有様 鬼神の如く見え候されど味方は数万の警固。
或は組伏せ 或は射取り 放す矢先は 湖の鮒や亀の子が目をまわす チョイと切って諸葛孔明と呼ばれたる佐々木四郎左衛門高綱を榛谷十郎が打取って候。 三郎兵衛承り 死首に是非もなき対面やと 父の死顔拝まんと窺う小四郎 氷の刃 雪の肌腹に ぐっと突立つる 人々あわて 介抱に卑怯未練も 父様に会いたさ武士の自害の手本を見せん。