日本の話芸 落語「素人浄瑠璃」

戻る
【スポンサーリンク】

この番組のまとめ

文楽の人形芝居のこちら側で語ってる芸ですな。 人形が お芝居してるこの舞台の横で太夫さんと三味線弾きの方がね語る芸でございますね。 太夫さんの前には見台というのが置いておましてそれも落語の見台みたいな あんなええ加減な物やございません。 大きな男の子が生まれると相撲取りにしようか文楽の太夫さんにしようかちゅうたぐらいで。 ただ 三味線弾きの方はいわば 女房役でございますんで逆に 小柄な方が多いんですね。

ですから とても聞いてられないという芸がお浄瑠璃が出てくるんでございますね。 本当に 七転八倒の苦しみを与えるというようなそういうような浄瑠璃も出てくる訳ですが。 これが 普通の方ならまだ いいんですがこれが 大家の旦那さんとかになりますというと自分の金と権力にものをいわせましてですね周りの者に 無理から聞かそうという人が出てくる。 お師匠はんにな ちょっと調子を やってんのでな調子を1本ほど まけてもらいたいとそう 言うといてくれ。 ええ? 何?羊羹を用意して…?羊羹 ええな 羊羹。

この間 誰やったやな頼りない奴に回らせたところが肝心の提灯屋さんへ行くのコロッと忘れよってなあれから 向こうの親父さんに会う度に『旦那さん。 あの〜提灯屋さんへは行ってくれたやろな?」。 「旦那さんに あの事を 度々お聞きしておりましたんで提灯屋さんへはもう 第一番に参りました」。 「何でも 明日銀行の開業がございましてな連吊り提灯を 500から誂えんなりませんのやそうで『今晩 どうしても夜通しをせん事には間に合わん。 そりゃ 提灯屋さんの言うのがもっともやで。

「頼母子講が出来ておりまして今日が初回で貰いになってますんやそうで『貰いになってる初回不参するという訳に参りませず今回のところだけはよろしゅう お断りを』と」。 「又はんが観音講の導師をしておりまして今晩 どうしても そっちへ行かんなりませんのやそうで『旦那さんも偉いには違いないけども観音さんには かなわんわい。 向こう 人出が無いもんですから甚兵衛さん 自ら 捻り鉢巻きでそこら 掃いたり 拭いたりお湯 沸かしたり 大騒動で『今回は よろしゅうお断りを』と」。

それで ご番頭どん あまり飲めんほうでおまっさかいな無理して 飲みはったもんで朝から 『頭が痛い お腹が痛い』ちゅうてはったんですけど昼間はお仕事のほうでございますんでなんとか やらせて頂きますが夜のほうは 言わば旦那さんのお慰みのほうでございますんでできましたら 養生のために』と最前から 休んではりますんで」。 「脚気?脚気で 浄瑠璃は聴けんか?」。

「ご寮さんでございますか?ご寮さん 何でんねん『朝から 旦那さん何か ニコニコしてはるけど何ぞ あるのんか?』言わはるもんですから『今晩 旦那さんの お浄瑠璃が』ちゅうたら 『あ~ そうか。 「いや~ 達者でんねんけどいや 何です 旦那私 体は達者でございますが何でございます私には 国元に年 いった母親が一人 おりまして」。

どない思てるか知らんがな浄瑠璃というのは難しいんやで ほんまに。 『あんな浄瑠璃』と思てるか知らんがなたとえ あれだけの浄瑠璃でもなあんな浄瑠璃でも紙3枚でも 高い所 上がって語れるもんなら語ってみなはれ ほんまに もう。 私ゃ もう生涯 浄瑠璃 語らんで。 私さえ語らなんだらええのやろ?私ゃ 生涯 浄瑠璃は語らんで。 生涯 浄瑠璃は語らんで」。 浄瑠璃の人情の分からんような人に私ゃ 家借りてもらいたい事ないのじゃ。 浄瑠璃の分かる人に ただで借りてもらいますわ。

それが提灯屋さんへ参りまして『実は』と言いかけましたら『これから お宅へ 行かせて頂くところで』 『何しに?』最前 ああして お断りしたものの今時分 旦那さんがどの お浄瑠璃をどの声で どういうふうに語ってはるかと思たら 気がそっちへ パ~ッと 行ってしもて皆目 仕事が手につかず 提灯の字逆さまに書いたりなんかしておかみさんに えらい叱られて『それやったら あんた代わりの職人 入れて あんた聞かせてもろてきなはれ』言うて提灯屋の親父さん参っとりますんで」。

『観音講の導師や皆 してるがために旦那さんの お浄瑠璃聴き逃すてな事になるねん。 又はん 言うとりまっせ『旦那さんの お浄瑠璃上手 下手という事になりましたらお素人衆のこってすさかいな言うて あ~ 参っとります又はん」。 死んどりましたんですけどね今晩 旦那さんの お浄瑠璃があるという事が チラッと耳に入ったんでしょうなパッと 生き返って」。 どない思てるのか知らん私も男じゃさかいな 大きな声で『生涯 浄瑠璃は語らん』てはっきり言うたんじゃ。