着ております物も柔らか物ではございますがもう ベッタリと襟垢が付いておりまして黒羽二重の白紋付きといやぁ体裁はよろしゅうございますけれどももう 地が赤くなって紋が汚れておりますんで何の事はない赤羽二重 黒紋付きというやつ。 これに 嘉平治平の襞の分からなくなった袴を着けますてぇと 破れ柄剥げ鞘の大小を落とし差しお侍のほうとは だいぶ様子合いが違っております。
ただいま お聞きのとおり野郎 少々加減が悪いと申しておりますんで」。 じゃあ 私の後ろ 回ってねチョイト 肩の所へ手 載っけておくんない。 浅草へ 芝居見物?あ~ 左様でございますか。 ええ?エヘヘ スッポンより 性質が悪いってぇくらいなもんだ。 チョイト 中 入る時は気を付けてくんなさいよ。 吉原の芸者は 屋根舟に乗る稽古をするぐれえのもんでねいきなり頭のほうから 行くてぇと大事な物 ポキッと やったり 川の中落っことしたりしますから。
ええ?『山から 小僧が泣いて来る』ってぇがね~ここで 一人大僧が泣いてらぁ 全く。 アア~ッ チクショウめ。 「ヘッ 収まらねえ チクショウ。 「ええ~灯りが暗くなりましたらねチョイト 提灯の尻拳固で殴ってくんねえ。 エヘヘヘ どういたしまして。 出すもん 出さねえで妙なまね するてぇと舟 ひっくり返しちまうぞチクショウ。 「へっ? 左様でございますか?ヘヘヘ どうも 恐れ入ります。 「『その方も疲れたであろうからお先煙草なら 尻めどから脂の出るほどやるんでございますけど ヘッ貴様に 少々 相談がある。
「左様でございましょうだいぶ お顔形が違うと思っておりましたが エヘッだんだん 騙して訳を聞いてみるとな『色男の おる所を存じているによって案内をしてやる』と たばかってこの舟まで連れ出した。 人殺しの手伝いは勘弁しておくんねえな」。 武士が 一旦大事を明かした上からは口外されては露見のおそれがある。 左様 首尾よく参れば骨折り 酒手 両用を兼ねて「2両? りゃんこか? おいただりゃんかい? おい。 「ハッハッ いい按配に飛び上がりやがって チクショウ。