一生懸命箱根の山を歩いておりますといくら 昼日中といいながら箱根の山の中で「もしもし」と言うんですから亀さんじゃないんですからね「何だろう?」と思って見回してみますと向こうの木の根方に襦袢一枚でもって結わかれている男がいるんでびっくりして…。 「恐れ入りますが私は 江戸は 芝露月町の若狭屋甚兵衛という者でございますが悪い奴に 身ぐるみ 盗られまして木に結わかれました。
若狭屋は 部屋へ入って女中に お粥を頼んでホッと一休み致しておりますとドヤドヤ ドヤドヤッと大勢 お客が入ってきた。 で この若狭屋という人が小四郎に 面立ちがいくらか 似ていたらしいんで「手前どもの長屋の者に違いがございません」とすぐに 手続きを致しましてまさか そのまま持って帰る訳にいきませんので火葬にして この壺を持って大家さんと店請は江戸へ戻って参りました。
ドッコイショ」と小四郎が入ってきたから二人が驚いたの なんの。 フフフ 二人が 何か心に引っ掛かる事があるから「もっとも 考えてみると十万億土という 遠い所から出てきたんだから『やれやれ くたびれたドッコイショ』といって一服してるのに違いがない。 迷わず 成仏しておくれ南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏」。 どうか迷わず 成仏しておくれ南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏」。