明治時代 西洋化の荒波の中で新たな日本画を生み出そうとカドミウムイエローや エメラルドグリーンなど当時 日本画の命と言われた墨の輪郭線を使わなかったこの絵は「朦朧体」と呼ばれ激しい非難を浴びました。 春草の日本画の実験は短い生涯の最後まで続きます。 この作品で 春草がトライしようとしているのは一歩 西洋の写実に近づいて遠近感 奥行きの表現だとか明暗 光の表現だとかそういったものを いかにして画面の中に 取り入れられるかというふうな事をこの作品では 試みているのではないかと思われます。
西洋だと 遠近法でつながってきますけどこれは 縦に ず~っと奥に しみこんでいくっていうこれが 日本独特のまあ 東洋独特の絵としてこういうふうに 奥に入っていくこの奥行きというのが非常に 魅力じゃないかなという感じがします。 そんな仮説のもと 2年前から東京国立近代美術館が中心となり科学調査が行われてきました。 これまでの科学調査で西洋絵の具の使用が顕著だったのが「賢首菩薩」です。 科学調査の結果 布の黄色い鳥の模様は 西洋絵の具のカドミウムイエロー。
すごく こう強烈な色彩対比になるんですけれども次に オレンジを際立たせたい部分にもう一度 オレンジを塗り重ねます。 春草が「涙の にじむような苦心」をしたと伝えられる「賢首菩薩」。 この「賢首菩薩」というのはただ一点だけの色彩表現にとどまらずやはり 近代の日本画の色彩表現の一つのモデルを 提示するような部分があったと思うんですね。 そういう意味では人が どう言おうとこの「賢首菩薩」において自分は 一つの仕事をしたという意識は あったんじゃないかなと想像しますけどね。