パリ白熱教室 第5回「世襲型資本主義の復活~19世紀の格差社会に逆もどり?」

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この番組のまとめ

これらの膨大なデータを基にピケティ教授はピケティ教授の 研究の集大成「21世紀の資本」は富が富を生み 格差が格差を生む現代の資本主義。 これは フランスで毎年の相続資産の総額がどれくらいのものか国民所得における割合を見たものだ。 相続資産の国民所得に対する割合は50年代は 相続資産がほとんどない時代だった。 2つの大戦を通じて相続資産が消滅した事は衝撃的でさえある。 相続資産の推移は 1940年代から50年代に 一時的に減少しその後 回復してきている。

相続資産に 生前贈与を含めるとその割合は 220%になるからだ。 第一次世界大戦が起きるまで資産格差は 拡大を続け2つの世界大戦の衝撃によって状況は一変した。 1950年から60年ごろの相続資産の減少の一端はこの事に原因がある。 しかも これは既に 資産の半分を生前贈与した残りだという事だ。 戦後の資産の量的な回復と高齢化のすさまじさは1人あたりの相続資産の額だけを見ていても分からない。 相続資産の大規模な拡大と高齢化が絡み合って進んできた事が重要だ。

19世紀には仕事をしなくていいほどの相続資産を受け継ぐ金持ちはごく少数だった。 それは つまり資産最上位1%の職業に就くか資産最上位1%の配偶者を得るかによってどう 生活に差が生まれるかという比較だ。 だから 最上位1%の資産家を配偶者にする事こそが19世紀の時代支配的な戦略だった。 不平等を測る もう一つの指標はその年齢層の どの程度の割合が生涯労働所得に匹敵する額を遺産として受け取っているかを見る事だ。

このところフランスでも ドイツでも イギリスでも国民所得に対する相続資産の割合が上昇している。 こうした比較は極めて便宜的で 不完全だが毎年の相続資産額の上昇がフランスだけの問題ではない事は明らかだ。 少し前に 中国を訪れたが上海や北京などの都市部ではあれだけ 不動産価格が上昇すると農村部やあるいは資産のない家族の出身者で自分の稼ぎしか頼るもののない人は都心で不動産を持つのは本当に困難だ。 だから 相続資産の長期的変化の研究で明らかにされた メカニズムや教訓は各国にとっても重要な意味を持つ。

完全な資本市場とはどんな 資産規模でもまさに 教科書のモデルだね。 しかし大きな資産を持つ場合にはもっと高度な金融商品に投資できるしその場合の収益性ははるかに高いだろう。 むしろ先進国の政府や IMFなどは国際的な資産移転の情報開示に反対してきた。 名目資産も増えるので それだけで億万長者の数が増えるからね。 それは 総人口や総資産の変化は考慮できたとしても1人あたりの 実質的な資産の上昇は分からない。

特に アメリカとヨーロッパの成長率を比較する時など両者のギャップの大半は人口増加率の差で説明できる。 資産の増加率は世界平均で 2.1%だが上位の資産保有者はその平均の3倍から4倍という早さで世界経済の成長率をはるかに上回る。 たたき上げの起業家もいるが相続による資産家もたくさん いる。 起業家もいれば相続による資産家もいる。 毎年 新顔の起業家に 上位層が全て置き換わったとしても上位層の資産が 平均の3倍で成長する事の理由にはならない。