実験では研究室に ハキリアリの巣を再現しできるだけ野生に近い状態で観察できるようにしました。 条件を うまく管理して観察する事ができればハキリアリの理解がもっと深まるはずです。 部屋には ハキリアリのコロニーに欠かせないものがありました。 ハキリアリは 農園でキノコの菌を育てているのです。 白い半透明のものはハキリアリの子供です。 今回の実験に ぴったりのハキリアリのコロニーがあるという情報が寄せられたからです。
ハキリアリは そこにゴミ捨て場を作ったわけです。 ゴミ捨て場や墓地があるというのはハキリアリのコロニーが 非常に洗練されている事を示しています。 高度に発達した組織は人間社会に近いかもしれません。 しかし アリの社会は 本当に人間社会のようなのでしょうか。 女王アリが コロニーを統率しているのでしょうか。 ハキリアリのコロニーには女王アリは 1匹しかいません。 新たに生まれた女王アリは巣を離れて オスと交尾し新たなコロニーを作ります。
今 地球上には 他の全ての昆虫を合わせたよりも多くの真社会性昆虫が生息しています。 アリは フェロモンという化学物質を出して地面に フェロモンを残しながら進みます。 食べ物が見つかったら巣へ帰る時に更に フェロモンを出して道しるべを強めます。 食べ物が見つからなかったら帰り道にはフェロモンを出さないのでこうして 多くのアリが通る事で道しるべは 更に強まります。 フェロモンが多い方の道へ進む事で食料が得られる可能性が高まります。
これは ハキリアリが腹部の辺りをこすって出している摩擦音です。 今 聞いているのは ハキリアリが出している摩擦音の一例です。 ハキリアリの行動は こうした集団的知性に支えられています。 人工の巣のおかげでハキリアリの驚くべき生態を間近で観察する事ができました。 しかし まだハキリアリの中に 習性がよく分からないアリがいます。 単純なルールに従う事で 複雑な集団行動を成し遂げているのです。 アリのコロニーの知恵が利用されているのは輸送問題だけではありません。