♪~大阪はね 大体 街全体が暑苦しいんですね。 「エエ~ッ? で お前 それ最前から一生懸命 何 拵えてんねん?」。 昨日な上町のおっさんが 具合が悪いっちゅうて 知らしに来よってな見舞いに行ってまだ 戻ってきよれへんねん」。 「この間 寄ってた連中ばかりやまず 米屋の米公に牛屋の丑公 な?植木屋の松公に金物屋の鉄 うん風呂屋の勇公に漬け物屋の孝公 うん」。 この間 他所から もろたやつで上等の蒲鉾があんねんあれ ちょっと 持っていくわ」。
今 私が言うた中でやで『よっしゃ 今日は 私が奢っといたろ』っちゅう奴が一人でも居てるか? おい。 大体 誰でもいつもな 旦那衆が居てるが」。 「さぁ それや な? たとえ一人でも旦那衆が居ったんでは飲む酒が 身につかん。 今日はわれか俺かの友達ばっかりで気がねなしに 気こんかいに飲もかっちゅうねん」。 「私らのこっちゃ 高いこと言うたかて しゃあないわな一人前 3円や」。
いつも 他人の尻にばっかり ついてるさかいお供でばっかり 行ってるさかい『弁慶はん 弁慶はん』やがね。 向こうは 玄人やで 商売人やで今日は 自前で来てるか弁慶で来とるか それくらいの事お前 ちゃんと 分かるが」。 いいえ 昨日 あの やかましうち呼びに来たよってにな慌てて 飛んで行たら阿呆らしいおっさんほんの 風邪ひきだんねやわそれを あのおっさん今にも 死にそうな声 出してウンウン 唸ってまんねやで私の顔を見るなり ケロッとしてな『よう 来てくれた。
「あのな ちょっと 浄瑠璃」。 「浄瑠璃? おいてや~。 あんた あれ 浄瑠璃語ってると思てんのんか?もう 長いこと 稽古してるもんのこっちゃやから我が連れ合いの事や一遍ぐらい 聴きに行ってやらないかんと思て この間も行たけどあんた あれ 何を言うてた?豚が 喘息 患うたとも何とも言えんような声 出してもうワウワウワウワウ ワウワウワウワウワ 言うて何を言うてんねや ちょっとも分かられへんねやわ。
そうやがな 昼日中から用もないのに 大きな風呂敷包み背負うて ウロウロウロウロしてあんな奴に限って ど盗人するねやがな」。 「言うたが何やねんな?他人が おとなしい仕事してるもん借り出しに来やがってもうちょっと 早う 帰ってきて清八が居てたら 向こう脛かぶりついてやるのに」。 井戸水の 冷たいのんで手拭い 絞ってこうか?氷 言うてこうか?スイカにしなはるか?それとも 冷や奴で 柳陰 一杯飲んでやったらどやねん?まあ~ 清やん 暑いやないか〜」。
今日は 土性骨の入るようにしてこましたるさかい』っちゅうなりバ~ッ 足払い かけよってボテッと うつ伏せにこかされてな馬乗りになって着物 クルクルッと脱がしていつの間に用意しよったん知らん線香と もぐさを持ってきて私の背中へ こんな大きな灸 据えやがんねん。 熱いわ〜い』っちゅうたら『何? 熱い?熱けりゃ 熱うないようにしたる~』 言うて井戸端へ ゾロゾロロ~ ゾロゾロロ〜ゾロゾロ 引きずっていて頭から 冷たい井戸水を ドバ~ッドバ〜ッ かけやがんねん。
表の戸 入るなりな 『今時分までどこ のたくり歩いてけつかんねこの アンケラソ』っちゅうやっちゃ。 「ハア~ 夫婦喧嘩というのはなかなか 面白いもんですな」。 「そのうちに 嬶がな『あんた 好きや~』 言うてド〜ッ 体当たりしてきよって嬶 大きい 私 小さいやろ?あおむけにゴロッと ひっくり返すされてな嬶 馬乗りになって涙 ボロボロ~ボロボロ こぼしとんねん。
「何したて 舟賃 渡した」。 「なにかいな?あっから ここまで1円も 舟賃 要るの?」。 「いや 1円も 舟賃が要るっちゅう訳やないけどもあれだけ べんちゃら言うとんねや 祝儀も入れてまぁ 1円 やった」。 「エエ~ッ? わ 割り前? そんなもう 無茶しいなや おいあっから ここまで 1円も舟賃 要ると分かってたら私 もう お前 背負うて泳いでくるねや」。 「嫌らしい事 でけへんやないか今日は 散財しに来てんねや」。 あ~ 船頭はん。 もう やってくれてるか?いや 結構 結構。
ひとつ 艫のほうへ出て源平踊っちゅうやつ やろか?」。 「げ 源平踊 面白い 面白いやろ やろう。 家に居てても 暑いもんでっさかい近所の嫁はん 誘うてこれも 同じように難波橋 涼みにやって参りまして。 今日は 家のなミナミ 行てまんの ハア~。 お友達の喧嘩の仲直りがあるとかいうて。 「どこに居ぃな? お徳さんいえ 今日 家のなその清八っつぁんと一緒にミナミ 行てまんのこんな所に居てる訳がおまへんやないか。