まぁ そういう事もいろいろ あったんでしょうがご祭礼でございまして近所の方にお会いしてお酒を勧められたんでございますが私 お酒頂戴できませんのでそのかわりにお赤飯を頂きましてお煮しめの味が 大変に結構だったもんですから菓子盆に 三度おかわりを致しましてで 帰りに 子供たちが境内で 太鼓を叩いて遊んでおりましたんで 私も一緒に 叩いて遊んで参りました」。
あそこは お賽銭が無いと何のご利益も無い所だからな。 どうせ源兵衛と太助は お供だ。 で 万事 源兵衛と太助がお詣り慣れをしてるからあの二人に任しておけば構わない。 そん時に『私 お酒 頂戴できません』なんてモジモジしてちゃいけませんよ。 お猪口に 一杯ぐらいいけるだろ? ね?それ 飲んだら あとは もう飲むような ふりをしてあとで源兵衛さんと太助さんから割り前を頂戴する」。 源兵衛と太助ありゃ町内でも 札付きの悪だ。
「で 程のいいところで手を叩いて お勘定と言うのはまだ 私の年じゃ気障んなるんだそうで厠へ立つような ふりをして裏梯子を下りて残らず 勘定は払ってしまいますんで」。 ええ?何を言ってんすよ 坊ちゃん勘定んところはね 源兵衛と太助が控えておりますんでね」。 あっ 坊ちゃん なんですよあれはねこの お稲荷様のご神木でございますな」。 「ええ?ウウッ あっ あれが おおも おおも大鳥居でございますな」。 ありゃ なんです この~お稲荷様をお慰めしてるんですな」。
な~?どうせ 向こうへ登楼りゃ顕れちまうんだからよぅせめて あの お茶屋ぐれえ何とか 誤魔化してえじゃねえかよぅ。 前に 話した事 無かったかな?田所町の堅物の一件」。 私 田所町三丁目日向屋半兵衛の伜時次郎と申します。 その時分大提灯で送られたそうですな。 角海老 大文字 品川楼なんてぇところが一流の貸座敷。 花魁のほうはと申しますと文金 赤熊 立兵庫この 廊下をパタ~リ パタリと歩く。 「そうでねえんだよ 若旦那。
で 坊ちゃんねあの大門の所で髭 生やした怖いおじさんが 4~5人それをね今時分 若旦那が 一人だけノコノコ帰ってってごらんなはいな。 『あれっ? あらぁ確か 三人で登楼ったんだが今時分 一人 帰るってぇなぁどっかうさん臭え野郎だ』ってんであの大門で 縛られて留められるてぇのがこの吉原の法だよ坊ちゃん。 ね?これから 座敷が変わって一杯 やりますからそれが済んだら 若旦那大門まで お送り致しますよ。
「クシュン クシュンエッヘッ ウッフッ ハア~ッウ~ン ゲッヘフ〜ンウッウッ ゲッヘヘ〜ッ」。 さぁ 若旦那どうなさいまして?また この二人がいじめるんでございましょ?さぁ 若旦那あちらへ参りましょ」。 さぁ花魁の所へ 若旦那 参り…」。 ああ うまい事を言ったもんでああいう廓で朝早く 他人の部屋ガラガラ 開けてなんかパ~パ〜 言ってる奴にあんまり 成績の良かった人は無いんだそうですな。 『ちょいと オシッコ 行ってくるから待ってておくれ~』ってんで部屋 出てっちゃったアッハハハ~ッ。