二階に 大勢さんお客様 おりましてね歌右衛門様 家に泊まっておくんなさるって聞いてまあ~私ゃ うれしくてね〜錦絵では見た事ありますがね本物 見るなぁ今日が初めてでね~まぁ 私ゃ うれしいからねまぁ とっときの お茶をいれてね 持ってっただよ。 『歌右衛門様。 お茶でごぜえます』って言ったらあの歌右衛門様がおらの顔 見てニコニコっと笑っておくんなすってねその またええ男なんてもんじゃねえね。 「お客様 お医者様? あっお医者様? あっ そうかね。
今 あの唸っておるのは歌右衛門殿か。 で 二階に 駆け上がって奥の一間に やって参りますと歌右衛門が えらい苦しみようでございます。 この歌右衛門という方 三代目の中村歌右衛門でございます。 で 屋号を したがって 加賀屋と言うんでございますがこの 三代目も屋号が加賀屋でございまして。 「歌右衛門殿。 もし 御身が開眼を致さぬ時には半井源太郎 今日限り医者を やめましょう。 なおも 療治をしなくてはいけないというので歌右衛門殿を治して下すってありがとう存じます。
「いや 歌右衛門殿いや 私はなこれを もらおうと思って療治をした訳ではござらんぞ。 金銭に潔白なる先生に対しまして金子をもって 礼をしようとした歌右衛門の誤り。 「源太勘当」の源太と「逆櫓」の松右衛門という二役を務めてこれが 大評判を取りました。
♪「ヨオ~ッ オイットナ アッ ヨ〜イヨ〜イ」♪~♪「ホオッ ホオッ ホオッ ホオッ」「いや あの両名はかっぽれは見事囃せ 囃せ。 よいか? 半井 この座敷にいる芸者も幇間もな貴様 なにか?歌右衛門を存じおるのか?」。 余が 何遍 招いても座敷に来た事ない歌右衛門まぁ 貴様のような貧乏医師が招いてなこれへ来るはずはなかろう。 もし歌右衛門 参ったならばな石が流るるわ木の葉が沈むわ。 「きっと 歌右衛門参るでございましょう」。 「たとえ どのような中でも拙者の手紙一本でこれへ参るでござりましょう」。
半井先生から火急の手紙が届きました」。 「半井先生?懐かしい名前を伺いました。 歌右衛門 手紙を受け取って読んでおりました。 「気持ちは分かるんですがねだって お客様は いっペえ入ってんですよ? 第一 親方座元に金方が 承知をするかどうか分かりませんよ」。 知って なった役者道だろ?そんな 勝手な真似はさせねえんだよ。 すぐに 歌右衛門 口上の支度にかかったんでございます。
その先生が今 向島におきまして歌右衛門 一刻のうちに参りませんければ切腹をなさるという身の大難にござりまする。 一刻 ありますれば向島へ参りまして事が済み次第戻って参りまして『二十四孝』の幕を開けますればどうか 江戸のお客様この歌右衛門にお力添えを隅から隅まで請い願い上げ朝まで待ってるよ 早く 行きな行きな。 これを受けました歌右衛門駕籠に乗りまして向島を目指しまして。 「歌右衛門殿間に合いました」。 先生に代わって 歌右衛門一差 舞わさして頂きます」。