♪~木曽の山奥 木地木師の在三濃村という寒村がございましてお百姓の治兵衛2人の伜がございます。 16歳の時に 親の許しを得て江戸へ出て参りまして日本橋の大伝馬町呉服問屋の佐野屋という所へ奉公に上がりますな。 分かったお前の親孝行に免じてなそれから 今までのお前の働き具合に免じてな私が ひとつ四十三両二分という金を五十両にして持たしてやろうじゃないか」。
「手前 あくまで俺の仕事を邪魔にするのか?来ねえはずは無えんだよ。 「手前は 俺の嬶のくせにどうして 俺の仕事を邪魔しやがるんだ。 地獄の一丁目と言って二丁目の無え所だ」。 実を言うと 懐ん中に五十両の金を持ってるんだ」。 旦那が足してくれて五十両にしてくれた。 着ている着物も全部 脱いでいくんだ」。 「その道中差しも置いて…」。 着物までは しょうがねえとしてこの道中差しは旦那が下さった物だ。 途中で 猪や狼に遭うと怖えからその 立派な道中差しに代わる何か 他のどんな物でもいいから刀を もらいてえが」。
何も知らないで道中している治三郎の耳元を ピュ~ッと 弾が。 「治三郎や。 ところで 治三郎 その山賊から もらったという脇差しを ちょいと私に見せてごらん」。 「治三郎や。 銘はございませんけれども薩州谷山の住人刀屋の間でこれが評判になりまして上杉家のご家老の耳に入った。 余が買い上げてつかわそう」と「治三郎や。 お前の 親孝行の気持ちが二百両の お金になったんだ。 また この二百両誰かに取られてしまったら今度は 代わりに 五百両の刀をもらってきますから…」。