あの アメリカンを一つ。 お待たせしました アメリカンコーヒーです。 え~っと アメリカンだったよな?うん。 アメリカンっていうのはな…。 どうも 朝から体の塩梅が よくないってんで掛かりつけの先生を呼びにやりまして診察を終えた先生が薬箱に手をかけてどっこいしょと立ち上がろうとしながら「時に 和尚は転失気がありますか?」とこう お尋ねになった。 さあ 和尚さん この転失気という言葉 知りません。 知らなけりゃ 「何ですか?」と聞きゃあいいんですがこの和尚様が もう知ったかぶりの固まりみたいな人で。
和尚様 行ってまいりました」。 「いえいえ それがですねあの~ 花屋さんにもこないだうちまで2つあったんだそうですけど一つは 床の間の置物にしといたら田舎から ご親類が見えたんでお土産に持たしたそうです」。 「あの 和尚様 てんしきってのは一体 何なんでございましょうか」。 え~ 先生 珍念さんが はい。 あ~ 珍念君か そこへお座り。 後学のために伺いたいんですけど先生 てんしきって 一体何なんでございましょうか?」。 だがなう~ 転失気などという言葉は別に 子どものそなたが知らなくてもよい言葉でな」。
転失気の『てん』というのは字で書くと車偏の転がるという字だ。 これで 転失気。 転失気というのは これおならの事だ」。 だって 『借りてこい』ったの和尚様だよ。 え~ 何て言おうかしら?和尚様 お酒が好きだからお酒… は いけないね。 そうだ! お酒飲む時の盃たくさん集めてるから『転失気は お盃の事だ』ってそう言ってやろう。 決~めた! 転失気は 盃 盃…。 それじゃ 申し上げますけど先生が おっしゃるには転失気というのは あの…お盃の事だそうでございます」。
つきましては 本日は 先生に愚僧の てんしきをお目にかけたいと存じましてな」。 「転失気が自慢になりますか?」。 「この桐の箱の中に?転失気 収まりましたか。 上方では「宿替え」という名で演じられ六代目 春風亭柳橋が得意とした「粗忽の釘」え~ お運びさまでありがたく御礼を申し上げます。 箒なんてのは 寝かしとくもんじゃないってえからさ重い荷物を担いでようやく うちへ たどりついてすぐに すいませんけれども箒を掛けるんで釘を一本打って下さい」。
お前さんの事私 一番よく分かってるんだから一服する前に釘を一本打って下さい」。 それが おめえみてえに早くやれ 早くやれってえとなやりてえ事だって やりたくなくなっちゃうんだ 本当に。 その大工につかまえて お前余計な指図をしやがって。 どのぐれえの釘が一番掛けやすいなんてのは俺が一番よく分かってんだ 本当は腹が立つ野郎だな。 何だと思ってんだ 本当にな。 『あなた 大工さんなんてのはもしもの事があるといけないから私 毎日 体温測るわね』。 俺に どんな危険日が待ち受けてんだ 本当に。
エヘヘヘ!あっしはね ガキの頃からたたき上げの大工でございましてね。 たまたまね かかあのうちの隣が普請場でございましてね毎日 通ったんでございます。 「アッハッハ あなたも そそっかしい」。 掛けやすいように 長い釘なんて事余計な事を指図しましてね。 あんまり 頭にきちゃったんでね八寸もある瓦っ釘でございますよまた イライラしてたんですね柱 外して壁に打ち込んじゃった。 それで さっきからガタガタ 音がしてたんですな。 釘を打ち込んだってんだけどもね仏壇の後ろでガタガタ ガタガタ 大きな音がする。