世界的に一番有名なのはですね江戸時代の浮世絵師飾北斎でございましてねその次にですね知られておりますのが 歌川広重。 この人の作品 有名なのがあの「東海道五十三次」の宿場を描いたやつでございましてね。 あの東海道五十三次の中に小田原の宿というのがございましてね。 ここはですね 小田原城という立派な お城があって城下町でもございますしまたですね 宿場町でもあります。 宿場の外れに 小松屋清兵衛という夫婦2人でやっております小さな宿屋がございましてね。
「あのヒョロピー!」。 「何で あの人が ヒョロピーやねん?」。 そやさかい ヒョロピーやねん」。 ちゃんと お勘定もろて宿賃もろて 初めてお客やがな。 え? あのな 『宿賃はお発ちの節で結構でございますけれどもあのお酒は酒屋から 現金で買うとります。 まあ みっともない話でございますけれども 手前どもちょっと 持ち合わせがないので酒代だけ5日分 先に頂けますか?』とこう じんわり言うてみぃ?な! そこで出したらお金 持ってるがな。
あ~ 宿賃 酒代 ひっくるめてどれぐらいになる?」。 いや それでございましたらねまだ細かいとこまで 勘定出来てぇしまへんねんけども皆でね ひっくるめて1両3分ほど頂いたらありがたいんでございますがな」。 「何? あの上酒を毎日 1升5合飲んで宿賃も入れて 皆で1両3分とは安いのう」。 「亭主それが ないんじゃ」。 どうせ力仕事もでけへんやろなあ。 「ああ 亭主 今申しておったその一文無しが張り替えたという衝立はどこにあるのじゃ?」。 「あんた 自分の立場分かってまんのか? あんた。
で 筆に墨をたっぷりと つけましてピャッピャッピャッピャッ ピャッピャッピャッピャッピャッピャッピャッピャッ ピャッ ピャッ!瞬く間に 何やら描き上げまして。 「あんた 自画自賛 激しいなあんた。 ええ? 自分で描いて『見事なもんや』て。 「亭主 その方の顔の真ん中に2つ 並んで光っておるものは何じゃ?」。 「亭主 あ~ この絵はな宿賃のカタに描いてやった。 さあ このあと宿屋の この養子の亭主が嫁さんに どんだけ怒られたか。
障子を ス~ッと開けますとこの亭主 びっくりしょまい事か「ギヤ~ッ!」と声を上げますと2階からガラガラガラガラ ガラガラガラガラッ ドッシ~ン!「もう うるさいな 朝から この人。 2階の雨戸をガラガラガラ~ッと開けますと朝日がサ~ッと さし込んでくる。 2階から ガラガラ ガラガラガラ ドッス〜ン!「ス~ッ ス〜ッ ス〜ッ!」。 なんと お城のですね大久保加賀守侯 お殿さんの耳にこれが入ります。
わしが 一筆 描き添えれば恐らく この絵は2千両になるであろう」。 亭主 もう これで大丈夫じゃ」。 『これは何じゃ?』とその絵師が問うたなればな『これは 京の鞍馬山の次の朝 泊まり客と一緒に雨戸を開けます。 餌をついばんで 戻ってくるとなんとこの老人の絵師が描いた 杉の梢この止まり木に2千両で買い上げよう」。 この小松屋清兵衛の表に立派な塗りの駕籠輿というものが着きまして。