浄瑠璃のお噺です 浄瑠璃。 浄瑠璃ちゅうのはねもう ほんま 正直言いまして大層な芸能でしてね始まるんですが浄瑠璃は違います。 まあ その昔は関西 殊に大阪の方ではこの浄瑠璃いうのが ものすごくはやってたんやそうでそのころのお噺「軒付け」というお噺ですが。 「おまはん 何やてなえらい このごろ浄瑠璃に凝ってるらしいな」。 ええ 浄瑠璃 凝ってまんねん」。 「いいえ あの~『忠臣蔵』の五段目が一段上がっただけ」。 「『忠臣蔵』の五段目ちゅうたら『山崎街道』」。
「もう ブルブル~ッ 震えが来ましてとてもやないけど 浄瑠璃 語れるそんな状態や おまへんねやわ。 「軽い浄瑠璃やなあ」。 「軽い浄瑠璃だ。 前から客が『惚け 惚け!んな けったいな浄瑠璃聞いた事ないわ。 大体な 浄瑠璃な一段 上がったぐらいですぐな 会に出る。 浄瑠璃の稽古をするんや。 こないだや 皆『そんな結構な浄瑠璃を表で語ってもうたんではもったいない。
「いや それが あんた三味線が まだだんねん」。 我々の浄瑠璃 あんた三味線 なかったら…」。 「天さん あ… あの人太棹の三味線 弾けまんの?太棹 弾けまんの?いつも あの~うちとこ回ってくる何回も回ってくる『屑 たまってまへん?』って来るあの紙屑屋の天さん?弾けまんの? 三味線。 向こうから三味線 担げて来まんがな。 どうです?あの 三味線の担げよう。 しかし 天さんがなあ浄瑠璃の三味線やるとは知りまへなんだ。 三味線は 上の方へ行ってもらわんと。
もう大丈夫。 おかし… おかしな… アッハッハ。 ええ もう大丈夫。 あんた 反吐と間違われてる。 「テーンツテンテーン」。 「天さんも 反吐と間違われてんの弾く事おまへんやろ」。 「ほいで あの~鰻の茶漬けでんねんけど一体 いつごろ 出まんねやろ?」。 あのねえ こういうものはまず 浄瑠璃であるという事を知らしめないかん ね。 そこで初めて『あっ これは 浄瑠璃なんだ』。 あの~春藤玄蕃のね あそこんとこやらしてもらいま」。 テーンツテンテーン テーンツテンテーン」。
『首見る役は 松王丸病を助くる 駕籠乗物門口にか し や』?」。 あなたねえ浄瑠璃 稽古する前にまずね 目医者 行きなはれ目医者。 『先立つ涙 案内にて物音響かば 驚きたまわん静かに静かにと心静めて 病所の口立ち寄れば 母の声嫁女 嫁女 おお 嬉しや義村参上~つかま〜つ〜る〜』」。 「ああ 今の 浄瑠璃やったんかい。 わいは 暗がりで本なしで浄瑠璃 語ってんねんぞ。 これだけの浄瑠璃暗いとこで語れるもんやったら語ってみぃ!」。 「そんな浄瑠璃 お前 明いとこで聞けるもんやったら聞いてみぃ」。