♪~その中から 一番おぞましい経験記憶を実体化して目の前に出してくるというソラリスの海が出てきましたけれども。 今回も 指南役の先生はロシア・東欧文学研究者の沼野充義さんです。 主人公のクリスの前には かつて自分の言動のせいで自殺させてしまった ハリーが現れて混乱に陥りますがこのハリーはどうやら 幽体Fというクリスの記憶から つくられた存在だと分かってきます。 面白いところなんですが人間の心の奥底で できたら隠したいようなトラウマとかこれが この小説の 一番 緊張感を盛り上げる要素だと思いますね。
一方 クリスは そんな自意識が芽生え始めた幽体ハリーを元の恋人とは 別の人格として愛し始めるわけですね?クリスの側もだんだん この幽体ハリーと時を過ごしていくうちにこの新しい存在のハリーを自分で引き受けようとそういうふうな覚悟も出てくると。 そこがまた 心を打つところでもありますけれどもこの小説の逆説的なところは幽体のハリーがですね普通の ある意味では人間以上に現代だったら ちょっと普通の人間には陳腐で言えないような事を…僕 とても よくできてると思うんですよ。
つまりここで 幽体ハリーというのは本来 人間じゃなかったはずなんですけれども自分は どこから来たのか自分は 一体 何者なのかというまあ これ ある意味では究極の人間的な問いですよね。 要は クリスの記憶しかも かなりデオドラントされた嫌な部分はなくしてる記憶から生成されてる幽体ハリーを好きだ好きだ言っても それはちょっと違うんじゃないかいというのは 分かる。