半月も 二十日も商え 休んじゃって おめえ第一 盤台が しょうがねえだろ」。 私はね 昨日今日 魚屋の女房やってんじゃないんだよ。 「私 さっき 見たんだけれどもねお前さんが よ~く研いでそば殻ん中へ突っ込んどいたろ?だから ピカピカ光ってね生きのいいサンマみたいな色をしていたよ」。 ガミガミ言うな 本当に」。 本当に。 しかし この魚屋ってえ商売はなつまらねえ商売だね。 おう しょ しょ!俺だよ! 俺だってんだよ!本当に… アッハッハッハ。 本当に… ヘヘッ。
帰ってきたら小言を言われると思ってもう ドキドキしてたの」。 俺は おめえ河岸へ行ってみるってえと一軒も 問屋 起きてねえ。 それから まあ一服やってるうちにはお天道様 出てくるかと…。 で まあ 一服やってるってえとひょいと こう波際を見るってえとな何か動いてるものがありやがる。 俺は もう 夢中でもって腹掛けの丼に入れて持ってきたよ。 まあ ちょいと こりゃ大変な目方だね。 数えたら 四十二両はあるぜ」。 すっかり どうもねうれしいんでもって夢中になっちゃったよ。
俺は おめえ 芝の浜行ってで おめえ 革の財布に四十二両おめえに渡したじゃねえか」。 でも まあ 一服やってるうちにお天道様 出るだろうと思ってひょいと見るとおめえ こう何だ動いてるものあるからこれを引きずり出してみるってえと 革の財布が出てきてで おめえに四十二両 渡したじゃねえか」。 昨日 お前さん私が起こした時 何つったよ?『うるせえ!』 どなりつけてあまり しつこく言って手荒な事をされても いけないと思うから明日の朝 早く起きて行ってもらえやいいと思うから私は 昨日の朝諦めちゃったんだよ。
ガラッと人間が変わりましてこれから 商いに精を出し始めましたら 何しろ腕のいいところへ 早く河岸行っていい魚を仕入れてきてお得意様に持っていきますから得意先でも「やっぱり 何だな魚は 勝公に限るな。 この… な… えっ?ああ 何だ?勘定取りに来る者が一人もいねえって?本当かい? そりゃ。 いえね ほら 門松を立ったろう?風が出てきたもんだからササが触れ合うんでサラサラ サラサラって音がするんだよ。 ええ?あっ これ何だ ヘソクリ入れだろう?ええ? へえ~。
これは 四十二両あるぜ」。 「お前さん その 革の財布にそれから 四十二両覚えがないかい?」。 なあ? コンチクショウ。