文政年間にらくだが見世物小屋に出た時はこりゃもう 江戸市民はひっくり返るような騒ぎだったそうでございます。 まあ あるお長屋に名前を馬五郎 あだ名をらくだこいつが大変な乱暴者で長屋の鼻つまみ。 ええ?ああ昨日 ばったり出くわした時に野郎 虎河豚 ぶら下げてたよ。 野郎 河豚には かなわねえんだ。 身寄りったって いねえし兄弟分ったって 俺一人だよ。 「え… えっ!?死んでんですか? らくださんが?えっ 何で死んだんですか?「何だと? この野郎」。 「おらぁ あの この野郎の兄弟分で砂漠の源てぇ者だ」。
月番ところへ行ってならくだが こうなった事を言って『通夜の真似事をしてえ』と。 で まあ その人の言うには『長屋には祝儀 不祝儀のつきええがあるだろうから香典 集めてこい』ってんです」。 長屋の祝儀 不祝儀のつきあいってぇがね つきあいってぇのは向こうで出すからこっちで出すんだ。 あの野郎この長屋に びた一文出した事はねえんだい。
ええ?悪い野郎だ あの野郎は ああ。 いや 朝 茶柱が立ったから『ついちゃ 大家さんはお忙しいでしょうから来なくて結構』」。 誰が行くもんかあんな野郎の通夜に」。 で 『まあ そのかわりと言っちゃ何ですが上等な酒を2升 それから蓮に 半平 牛蒡なんてぇものをまあ 甘辛く煮て大皿へ一つ 持ってくるように』」。 「うん… あの~『大家といやあ 親も同然店子といやあ 子も同様』」。 『是非 見てえ』ってその野郎に そう言っとけ!」。
「あそこ行って菜漬の樽一つ もらってこい」。 冗談じゃねえ。 こっちは商売物だよ。 鼻の頭沢庵臭くてしょうがねえや。 冗談じゃねえ。 「ええ で まあ兄弟分ってぇ人が来てましてねで 『菜漬の樽一つ もらってこい』ってんですよ」。 「冗談言うなよ おい。 「ふざけんなよ おい!冗談じゃ…商売物だよ おめえ!「そうしますと…」。 もう 真似事で ようがすよ。 もう… 仕事行かなきゃいけねえもんでね。 もう それで もう…あ~っ アタタタッ! あっ。 「ほ… 本当に真似事だけでええ。
グズグズ言うと はっ倒されたりなんかするからさあまあ いくらか出して。 ヘッ 宮本武蔵の草鞋。 左 甚五郎がこしらえたカエルだってんですよ。 この長屋に甚五郎作のカエルがあるわきゃねえ。 でも グズグズ言われんのが嫌だから『じゃあ見るだけ見ましょうか』って見たよ。 「何だ? 何だと この野郎!『釜の蓋があかねえ』だと?誰に口きいてんだ てめえは!ふざけた事をぬかすな! ええ?一年365日 雨降り風間人間なら 病み患えさ。