ちょうどいいってんでね「あの~ ざこばにいちゃん米朝師匠の『一文笛』教えてもらえませんか?」「お前やったら わしが教えたる!タッタッと教えたるわい!パッと教えたる…!」。
だから 我々は 技術者である職人である」って変な自負がございましてね昔のスリは腕比べをしたそうです。 殿方が上着をお召しになりましてねお財布を内ポケットに入れます。 ボタンを外して 財布を抜いて中の金をとってまた 財布を戻してボタンを掛けて 帰ってきた。 ボタン外して 中の財布を抜いて中の金をとって これを勘定して領収書を入れて戻したそうでございます。
「いやいや 大きな声出されちゃ困るんで!で 旦那のお姿をあっしらの仲間が神田五軒町辺りで見かけましてで そのお腰のたばこ入れに目をつけて池之端七軒町辺りまで ずっとつけたんでございますがね旦那に隙がねえってやつだ。 えっ? 手下ってのは?あっしら 手下の事を手下 手下と申しますんでうちにも 若え者が 何人かごろちょろしておりましてね江戸へ散っちゃあ仕事をしてますんで仲間内の仕事はすぐ分かりますんでうちの手下が 『おう お前あのたばこ入れ 狙ってんだろ。
と申しますのはね人から人へ伝わって いずれ仲間内の耳に入りますとね『野郎 なんてまねしやがるんだ』ってんでね痛え腹 触られますんでで あの~ あっしが出ましたらちょいと 時を置いて出てもらえますか?と申しますのはね連れ立って歩いてますと誰の目が光ってるか分からねえ。 一緒に歩いてると 『野郎談合したんじゃねえか』ってね嫌な思いしますんであっしが出ましたら一服つけて… ったってたばこ入れはこっちへ来てますからゆっくりお茶でも飲んで それからおいおい出て頂けますか?」。 商売柄とは言うがな。
兄ぃが住んでて まして言っちゃ悪いが あの貧乏長屋。 「角の駄菓子屋でもって 一文笛抜いたの てめえじゃねえのか?」。 「駄菓子屋の一文…?ああ 昨日のこったよ。 じゃあ あっしはこういう者でございますけど来た事だけは お伝え願います』ってんで 長屋出た。 角の駄菓子屋子どもたちが遊んでたよ。 麻の袋から竹の これっぱかりの笛赤や青に塗った一文笛ってのかい。 みんなが遊んでるもんだからそばへ寄ってって 一文笛1本持って ピーと吹いたよ。 そうしたら あの駄菓子屋のばばあ先から いけすかねえ。
あのうちへ乗り込んでって『お坊ちゃんは お戻りですか?』『まだ帰ってきておりませんが』こら 様子がおかしいってんで長屋中でもってあちこち捜して回ってな。 「ばか野郎!エンコ詰めやがって!おい 誰か その落ちた指 持ってなすぐ 医者行け!つながるかどうか分からねえがな秀 痛みが和らいだらないつでもいい うちへ来い。 こんな貧乏長屋だ来る医者は決まってらぁ。 そこの旦那の往診で 洋行帰りの前田とかいう医者が来る。