今日も この会場へ来る時に地下鉄で参りましてねで 電車降りまして 階段上がろうかなと思いましたらそうですね 70歳ぐらいのおじいちゃんとおばあちゃんがこっちは 年寄りですから間に合うかどうか楽しみにじ~っと見てましたらおばあちゃんだけその電車へ パッと乗ってドアが閉まっちゃった。 まあ 五郎八茶碗で一杯16文っていうんですからまあ 当時としてもお安い方でございまして。 五郎八茶碗っていうのは底の深い 大きな茶碗でそこへ酒をつぎますと1合1勺は入ると。
若いうちから あの~ 酒道楽で『町内の酒屋より隣町の酒屋の方が1合で ちょこ1杯半安いから隣町の酒屋 行け』なんてほかに 何の道楽はございませんでして。 今のおじさん風呂敷包み 忘れてったぜ。 で 明日の晩来たら 『おじいさん風呂敷包み忘れてましたよ』って「ちょっと ちょっと…」。 いくら繁盛したって2畳敷きの居酒屋じゃ一生涯 頭が上がらないって。 この金 届けてやりゃ おじいさん大喜びかもしれないけど私たち夫婦は一生涯 可哀想じゃない。 同じ可哀想にするんなら他人の方を可哀想にしておしまいな…」。
かてて加えて 女房には患われこれが 長の患いで家財道具を洗いざらい売り払ったあげくの果てに女房には死なれたった一人の娘が『お父っつぁん 80の坂を過ぎて元のような訳にはまいりませんが小僧の2人も使ってお父っつぁんは 店番をして商売ができますように…』。 酒屋夫婦も 50両という金に目がくらんだか…。 人に恨みのあるものか ないものか覚えていろよと形相ものすごくそら もう日の出の勢いでございましてその繁盛ぶりといったら大変なもんでございましてもう 酒屋夫婦は全然 店には顔を出しません。
今度参りました ばあやはでっぷり太った まあ 赤ら顔の「あの~ 旦那 お暇を頂きたいんでごぜえますが」。 あっしは もう一晩ごやっかいになりますからで 旦那 夜中に赤ん坊が どんな事をするか旦那 夜中に見ていたらよかんべ」。 とんとん とんとん とんとんとんとん 雨戸を閉めて店の者を寝かしつけてしまいましたがもう 旦那は寝るどこじゃございません。