♪~一年中 こうやって 着物を着て座布団へ座っておしゃべりをして それをお客様に聞いて頂くという本当に のんきな商売ですな。 え~ 今 申し上げたようにね座布団一枚 敷いておりますがまあ これ ご存じの方もおいでになるでしょうがね座布団 まあ 四角でね今 私 座ってますがこの右手と左手と後ろなんですがねここには この…お客様からはちょっと見えないんですが糸で縫ってある 縫い目というものがございます。
じゃあさ私がね 病気で寝てるとか何とかそう言って うまく断っておくれ。 「病気で寝てるって? ああそうですか 弱っちゃったな。 どうした?喜瀬川 おら 来たったらは〜あの花魁病気で寝ておりましてねどうしても顔を出せない。 「病気で寝とる?喜瀬川が。 あっ そう!このね 吉原には昔から規則というものがございましてな花魁が病気で寝てる時は殿方は お見舞いができない。
あのお大尽ね今日 久方ぶりに見えたんだ。 お大尽が帰った明くる日からあの花魁はお大尽に会いたいお大尽に会いたい。 あの花魁は お大尽に恋焦がれ死にをなさいました』とお大尽の隙うかがってそのお茶でもって目の縁を ちょいちょいとこう ぬらしてごらん。 お大尽 このお茶を… ちょっとぬるくなってますがねこれ 私も頂戴致しますんで。 「ですから どういう訳で私 そういう事を申し上げたかというと実は このお話はお大尽にだけはしてはいけないと固く口止めをされております。
「喜助… バッキャロー!ワレ 言ってええ事と悪い事があるだよ。 あの花魁 『お大尽に会いたいお大尽に会いたい 会いたい』となさいましたよ! ねえ。 私はねえあの花魁の心持ちを思うと もうかわいそうで かわいそうで…」。 「喜瀬川が… おっちんだ?あ~ かえぇそうな事をした。 それも おらに恋焦がれ死にって喜瀬川が おっちんだ…。 誰だと思って ひょっと見たらこれが 喜瀬川だ。 おらな 喜瀬川のいねえこうだなとこ二度と来ねえがら。 「山谷ってえと近えか?じゃあな 墓参りして帰るから案内ぶて」。
もう 俺辞めた! この商売 今日。 あっ お大尽。 これでなだけど 何でございますな お大尽。 本当に あの喜瀬川花魁って方はいい方でございましたなあ」。 『俺は 喜瀬川でなくちゃあ嫌だ』って客が ウワッといる中で「寺は どこだ?」。 あ? 喜瀬川の墓は どれだ?」。 ええ~ ナンマンダブナンマンダブ ナンマンダブ…。 え~ナンマンダブ ナンマンダブ…。 ワレ この線香立てればええってもんでねえだ。 ナンマンダブ ナンマンダブナンマンダブ ナンマンダブナンマンダブ ナンマンダブナンマンダブ…。