むかし あみだじという てらに芳一という おとこがおりました。 芳一は めがみえません。 芳一が びわをひきながらかたれば「おにも おもわずなみだをながす」といわれるほどでした。 「芳一そなたのびわは すばらしいわがあるじもたいそう およろこびです。 そのよる あめのふるなか芳一が でかけていきました。 そこに芳一がいました。 「芳一さん」。 「芳一さん!」。 芳一のからだのありとあらゆるところにびっしりと おきょうがかきつけられました。 あしおとは 芳一のまえでぴたりと とまりました。 「芳一」。
くさが いっせいにざわざわと うごきだし…。 ほりのみずがゴボゴボと なみだった。 そして ふいに。 「おいてけ~。 おいてけ~」。 その おそろしいこえはほりのそこから きこえてきた。 おい ぼうず!」。 おやこはつったさかなも そのままにいのち からがら にげかえった。 それからというもの そのほりは「おいてけぼり」とよばれるようになった。 「わっはっは…みんな いくじがないのお。 よ~し! わしがいってさかなをた~んと つってきてやらあ!」。 と つりざおをもっていせいよく でかけていった。
「おや おまえさん おかえり。 つりは どうだったんだい?」。 「えっ? あ~ つり? あ〜もう つりは もうごめんだ」。 「ほう ばけもの?それはこんなかおじゃなかったかえ?」。 「はあ?ぎゃあ~!」。 そのとたんいえのあかりが ふっときえた。 ♪~れいこくなしゅじんと おくがたにしかられないようにおきくは いつもおずおず はたらいていました。 ことに この なんきん皿はしゅじんじまんのだいじな お皿でしたからおきくはいつにもまして ていねいに1まい1まい ぬぐっております。