「にっぽんの芸能」 今回は歌舞伎女方の人間国宝坂東玉三郎さんがこれまでに演じられてきたさまざまな女性の心を語る「伝心」です。 今日は「伽羅先代萩」の政岡のお話を伝えさせて頂きます。 武家のお家騒動を描く「伽羅先代萩」には室町時代の東北 足利家を舞台にお家乗っ取りの陰謀が描かれます。 古くから…お家騒動の渦中に立たされた政岡を玉三郎さんはどのように見ているのでしょうか。
あの年ばえでいる鶴千代がねいちいち表現しないんでしょうけれども「千松が死んでは悪い乳母も死んでは悪いのう」とあの鶴千代の口から出るということに対してあれだけの吟味をしながらごはんを炊いて鶴千代と千松が よくなかったら「先代萩」は できませんです。 …で どんなに政岡が持っていこうとしても鶴千代と千松がちゃんとしてなかったら芝居は成り立たないんです。 ですから 私は 偽善でも何でもなくひたすら 鶴千代と千松に楽屋で気を遣っています。
穏やかな ひとときも つかの間幕府の要職にある…不安を感じた政岡は懐剣を手に取り千松に 日頃から教えてきたことを念押しします。 常々 毒殺を警戒していた政岡は鶴千代が菓子に手を出すのを止めます。 なんの まァお上へ対して 慮外せし千松御成敗は お家の為。 栄御前は 政岡が 鶴千代と千松を取り替えて育てていたのではと考えああ これ ひそかに ひそかに。 その方が 実に冷静に 栄御前を今まで 自分の味方と思うような態度でしおおせたということはそこまで やり通さないとできませんね。