♪~この作品は 1745年に人形浄瑠璃として初演されましたが駕籠屋にたかられているのを侠客の釣船三婦に助けられます。 これは もともと上方のお芝居なんでございますけれども初代が手がけまして 当たり役にいたしましたものでございますんで私も 一番最初は木の芽会という勉強会で随分若い時に実父がそれを受け継いでおりましたので一番は 性根と申しますけども 我々は。
天下茶屋あたりでは二十五文が所はずんで駕籠やとはざなるまいと思うたに夕べはちっとも寝られなんだわやい。 ほんに三婦さんの言わんす通り昨日お役所へでるまではもしも命におよぶ様なおさばきになりはせまいかとなみや大抵の心配ではなかったが有難うござんすわいなア。 して駕籠賃は何んぼじゃい。 九百九十九出入がある。 わいらを畳んで仕舞うて千人投の数に合わす奴なれど了簡していなしてやるわい。 わしらが担いだ駕籠賃じゃ。 危うい処を其許のお世話にて事なくおさまり大慶至極只今拙者流浪の身の上時をえてお礼申す。
いやな こないなな暑い盛りにこんなとこでな じっと待ってたら今日 当番のお役目うけし堤藤内御法通り科人の縄ときめされ。 その方 去年九月十三日当家中大鳥佐賀右衛門が家来に手を負わせそれゆえ玉島兵太夫様格別の思召をもって御赦免と相成る有難く心得ましょうぞ。 又一ツには玉島兵太夫様のお陰。 御子息 磯之丞様のことはこの団七が命にかえてもみじんさらさら御難儀はさせませぬ。 自体気のええわれがこないな事に成ったのもよくよくの事と察してはいたがともかくも まっ 目出度い。
そんなら団七先へ行て待っているぞよ。 ハテマアこれかけてくれと申すにコレ琴浦アノ磯めが身請けしてお鯛茶屋の箱入り指もささせず賞翫しおる。 あんな磯めの様な風来人に心が残るとサラリと気をかえこの佐賀右衛門と一緒に難波屋で祝言しよう。 その団七が何んで邪魔を致すのだ。 アアイヤ邪魔は致しませぬが斯う見た処 お侍の女子を捕えて大人気ないご仁体にもさわりましょう。 コレ 此の道を行くと並木の蔭の茶屋の内昆布屋という新見世に磯之丞様が行ってござる。
短こう云えば磯之丞様お鯛茶屋よりお帰りなされぬその時の思い付 お遊びなさるる浜先で非人を頼んで身上噺それがお耳にとまってお帰りなされたそれ故にお袋様のお喜びその御褒美にあの着物まだその上にお金もやりそれから止めたあのなりじゃわいなァ。 その磯之丞様というのは備中出のお侍玉島兵太夫様の御子息か。 この徳兵衛も備中玉島の生れ僅かな科で追払われ国を出る時残しておいた女房の為にお主なりゃ俺が為にも親方筋そうとも知らず連れに頼まれて佐賀右衛門の尻もったは大きな誤り何なりと望み次第。
時に お辰どん 今聞いていればこなさんは国許玉島へむけてお帰りとの事じゃが徳兵衛も一緒かいな。 和泉の国浜田の御家中玉島兵太夫様の御子息に磯之丞様というお方がござんすへえよろしゅうござります。 その磯之丞様の親御兵太夫様は私が方にも縁がござんす。 磯之丞様をお辰どんに預けてはこの三婦の男が立たぬわい。 叱りつけられ もじもじ もじもじ と徳兵衛女房聞きとがめモシ三婦さん無理に頼まれとうて云うのじゃござんせぬが満更ひじりかすりを喰うような女子じゃござんせぬ。
徳兵衛が思うにもあの三婦という親父は又思うまいものでもない。 お辰はもとより…さしうつむいて居たりしが 何思いけん立上り火鉢にかけし鉄弓の 火になったのを押取ってわれと我が手に我が顔へモシ三婦さん思案の外という此顔へきずつけました。 出来た 磯之丞様を預けましょう。 私がためにも徳兵衛がためにも親方筋其の御子息をお預り申さねば連れ合いの男も立たずまた 私もぬしへ立たぬによってモシ三婦さん御推量なされて下さりませなァ。
そうでござんすな そんなら九郎兵衛さんにお預け申せばこれで安心 そんならちょっと琴浦さんを呼んできましょう。 今な九郎兵衛さんのところ迎えが来たによって早ういて下さんせいなァ。 そんならわたしゃ九郎兵衛さんの家へ行くのでござんすかえ。 九郎兵衛さん どうぞ中へ入って下さんせ。 九郎兵衛にはな 喜ばす事がある。 せっかくの志 九郎兵衛行こうか。
この九郎兵衛の使いじゃと言うてわしの舅御が 駕籠をもってあの こ… 琴浦どん…。 コレコレ 親父どんこの駕籠の中の このお女中はなにせ香炉をもって 五十両のかたり。 その恩も忘れやがって娘のお梶と乳くり合いそれも 月々のあてがい貰うがよさに目をつぶってやったらエエ それはもう 親父どんのおかげで女房 子どもが色々とお世話になりその得意先で あのような事をされては…。 今日 琴浦をちょろまかしてきたのは惚れてござる佐賀右衛門様に渡して大金にするのじゃわい。
義平次も三十両当分どりに少しは和らぎヘッヘヘヘヘヘヘそうかいな そうかいな そうかいな。 実はナ琴浦を佐賀右衛門様に渡せば百両がとこの金は目の前にブラブラしてんのやがな。 うん ただやると思うて三十両で戻してやるわい。 さあ ソレ 三十両。 もう これからは親孝行いたしまして親父どんに よろこんでもらいます。 ヘエ これからはせいぜい 親孝行いたしまして…。 親孝行は ええのじゃ 親孝行は。 最前言うた 三十両の金 早うおくれえな。