日本の話芸 神田紫 講談「柳沢昇進録のうち お歌合わせ」

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この番組のまとめ

「う~ん 実はな 明後日御母后様からお歌の会にお招きを受けておる。 ですから教養にも富んでおりますしまた趣味の方でも盆画 盆石 歌 俳諧つづみに 太鼓に 琴 三味線ゴルフに マージャン トトカルチョともう何でもござれの万能選手でございます。 それを何べんも何べんも書き直してようやく清書してこれを牧野備後守の屋敷へ持参いたしました。 御母后様とは 言わずと知れた五代将軍綱吉公の生母すると これが 天地人の天に抜けました。 我が組下の柳沢弥太郎と申す者でございます」。

三代将軍 家光公に見初められ以来 大奥へ上がって若子お二方を身まいらせ三代 四代の将軍の没後は五代将軍 綱吉公の御母后として権勢並ぶ者のない女性でございます。 まだ年若な弥太郎。 「弥太郎とやら 見事でありました。 弥太郎 心の内で…。 「弥太郎 即吟をいたすか?」。 御母后様から お声がかかったんですが弥太郎は もう有頂天になっているんで何にも聞こえません。 弥太郎 変な顔して。 弥太郎 少し やけ気味になって墨を すり始めました。 言われた時に 弥太郎 頭をかいて。

どなた?まあ 源太郎ではありませんか」。 「源太郎。 これは旦那様おいででございましたか。 これ みんな 旦那様が 丹精込めて育てたんでございますか?」。 いつも旦那様はお前の働きには感心してるんですよ。 『町人には 惜しい心意気』といつもいつも 旦那様と噂してるんですよ」。 「時に 源太郎」。 「そなたの おじ御は大層 手広く商いをしているそうですがそれは 本当ですか?」。 うちの おじ貴こそ本当の大町人というんでございましょうかね。 出入り屋敷も 数軒ありまして奉公人だって何十人もおりましてね。

でもね ご注文以上のご進物をおそろえいたしましたよ。 その明くる日さめは数々の引き出物とともに堂々と桂昌院殿御前へとまかりいでました。 さめは考える様子もなくサラサラッと したためましてお見せいたしますと「見事である」と お褒めを賜りました。 これは今 この白扇を逆さまにしたような富士山が田子の浦の夕なぎに映っているといたします。 ちょうど 富士山の絶頂の辺りにこぎ寄せたさまが「見事である」と お褒めを頂きました。 そこで 「今一句 所望」と仰せられ下しおかれたお題が「富士をたもとに入れよ」と言うんです。