古典芸能への招待 歌舞伎「新版歌祭文」座摩社・野崎村

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この番組のまとめ

大坂の油屋の娘 お染そして 丁稚の久松を描いたお染久松物の中でも人気の高い作品です。 スタジオには 後半の演目「野崎村」でお光を演じてらっしゃいます歌舞伎俳優中村時蔵さんをお招きしました。 この作品元の文楽でも人気の高い演目で 「野崎村」の前の段「座摩社」…文楽では 「座摩社」と呼びますけれども文楽では時折 上演されているんですけれども歌舞伎の本興行では およそ40年ぶり。

あれはな山家屋の佐四郎というて船場切っての大金持の若旦那これがまた こちの油屋の一人娘お染さまへ きつい惚れようや。 山家屋の佐四郎ともあろうものがこの寒いのにお百度参りハア 恋なればこそじゃなあ。 そこで これ 小助そなたの力をかりるためやれ 加賀染の褌を買うの羽織の裏が欲しいのとみな 山家屋の呑み込み払い。 え~ 「数ならぬわが身に浅からぬお情け身に余り忝けのう存じまいらせ候」フッフッフッフ…もし若旦那 冥加銭 冥加銭。

これは火の性分ゆえ 色事でござるな?なんと若旦那 きついものかな!ヘイヘイ このお方は大の色事師でござりまする。 邪魔?これは 乾坤中断と申してな金星の男星と銀星のおなご星要するに 佐四郎星とお染星じゃなこれが 寄りそおうとすると前髪の真鍮星が 夜這星となって邪魔をする。 もし 弥忠太様あの久松につかます銅みゃくは?先刻 あの手水鉢に仕掛けておいた。 わしは ここで久松を待ちあの銅脉と すりかえ小倉さまからの一貫五百目せしめて見せよう。

言葉かず 言わず取る手を振りはなし お目をかすめて忍び逢いもう この上は この久松 死んでお詫びを。 と手を引く 主従三世相 忍び入るこそわりなけれああ ええ酒やったな。 おっ? なにや ブツブツスウスウささらで鍋の底こするような音がするわ。 ああ なむ稲荷 八幡佐四郎さまを天下りさせて下さりませ。 佐四郎さまを…。 佐四郎さま 佐四郎さま!ええ 佐四郎さまを天下りさせて下さりませ。 それは 私の大切な金財布です。 おっ 小助どん 首尾は?シ~ッ!ハハハハハ。

歌舞伎ではお光は 田舎娘という部類でそれに対して お染が町娘ということで両方が対比されてるんですけども田舎娘は うちのことをかいがいしく やりくりしてとっても純粋な女性として描かれております。 ふだん 毎日やってることなんでねそういう生活感が…出せるといいなと思いつつ そこでまた義太夫… 狂言でございますので義太夫に合わせて芝居もしなくちゃいけないそこが まあ難しいところだと思います。

ええか? 気を落ちつけて よう聞きゃや久作出せ 久作出せて… 久作出さんかい! 身のあやまりに久松は差しうつむいて言葉さえ出ぬをよもや そのような不しだらはござんすまい。 掛け取りの為替の金どこでどうチョロまかしよったか内へ帰って 開けたところがわやぴんの銅脉なんじゃい なんじゃいなんじゃいええ?白目むくは無念なか無念やったらチョロまかした金出すかあるまいがななけりゃ 親父の久作出せ出さずと奥へ踏ん込むぞ。

末菜刀と気も勇み 手もとも軽うチョキチョキチョキチョキ 切っても切れぬ恋衣や元の白地をなまなかに お染は思い 久松があとを慕うて野崎村 堤伝いに ようようと 梅を目当てに軒のつまああ これ もそっと静かにいやいのうあ お嬢さま これをお渡し申します。

草深い在所におこうより知恵づけのため油屋へ丁稚奉公これほどまでに成人して 商いの道読み書きまで 人並みになったもその恩も義理も弁えぬはこれ見や こりゃなさっき お光が買うておいたお夏清十郎の道行本。 それをいい立てに暇をもらい分けておくが上分別と思うたなれど引き負いの金の工面どのようにきばってもようよう拵えたさっきの金なさぬ中でも親子という名があるからはこれ お染さま ではないこの本のお夏とやら清十郎を可愛がって下さるは嬉しいようで怨めしいわい。