うちの家内とね朝丘雪路さんと一緒にするわけにはいきませんけれどもね。 同じ このアルツハイマー性認知症てえやつですな。 私も そこへ気が付きまして誰もいなくなってからうちの鏡台をパッと まくってで 自分の方も クルッとこう まくりましてねこういう具合に 出して見た。 これはいけないと思いまして吸い出し膏というのがあったんでこれを鏡と相談しながらうまい具合に ベタンと貼っといた。 これで安心だなんて思ってましたらそこへ うちの者が帰ってきまして「おじいちゃんじゃないの?鏡台に膏薬 おっ貼ったのは」なんて。
それから 「幽霊の手持ち無沙汰や枯れ柳」なんてえことを申しましてどういうわけですか 幽霊てえのはみんな 柳の木の下に出ますね。 さあ これから寝ようかなと思う時分になるってえとおまはんのところでもってカンカン カンカン 始めるんでみんな寂しくって寝つくことができねえんだ。 三浦屋の高尾太夫でしょう?もう あっちはね相手になる代物じゃあねえからあげたことはありませんけれどもね道中を見たことがありますよ。
で 高尾太夫が どうかしたんですかい?」。 「登廊いたしましたる揚屋が三浦屋で相方に出ましたのが当時 全盛の高尾太夫」。 今までのことは なき縁と諦めくれよと申しましたるところ高尾は ふびんにも拙者に操を立てるがため仙台公の意に従わずために身請けから引き揚げても高尾丸の船中においてバッサリとやられましたがな。
「そちゃ 女房 高尾じゃないか」。 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏」。 「これは拙者と高尾との間に交わしましたる香。 「もらわないよ しみったれ!そのかわり今晩 鉦たたいてみやがれ 本当に。 『お前は 島田重三さん』。 『そちゃ 女房 高尾じゃないか』。 『お前は 島田重三さん』ってえのをね 3百」。 「萬金丹って読むんですよ」。 「ああ 萬金丹か。 その隣が…「その隣が 越中富山の反魂丹。 越中富山の反魂丹…。 『お前は 島田重三さん』」。