ところが もうちょっと困ったことには脳梗塞というやつを起こしましてね足をケガした 手をケガしたってあれは リハビリやりますな。 あの 何ですな あの~…理学療法なんてえのと 作業療法という2つの方法があって作業療法というのは 何かゴムひもを 引っ張ってみましたりねこんな粘土を こうやってこねてみたり…。 それから 一生懸命…。 口も回らないんだろうな」なんて思ってたんですがね夜 寝ながら 一生懸命噺の稽古してたら落語は覚えてるんですよ。
働いて働いて お店をどんどん どんどん大きくしてで ご自分は もう年を取ったから若旦那に店を譲ってそして 楽隠居をしようというんでございますがね。 「どっか 隠居所にいいとこありませんかね」と探していたら今の根岸の里 鶯谷の近辺ですかな。 あの辺りは 昔はのんびりしたとこでございますがそこにね 一軒のおうちに昔は住んでた方がお茶人と見えましてねお茶のお道具から 一式の物がついてて孫店という3軒の長屋がついてる。 「お茶の湯って あの 蔵前の若旦那がよくやってる かき回して飲むやつ?」。
「生意気なこと言って。 え~っと そうだな青黄粉 入れなくちゃいけない。 青黄粉な 分量 分かんねえからまあ少し おまけしとくかな これな。 「これは ご隠居さん 何てやつ?」。 座敷で使うから 座敷ざさらというんだな。 一名 泡立たせともいうがな。 ご隠居さんの あぶく立ちませんね」。 洗濯物なんかにこすりつけてやるってえとあぶくが立って 垢が落ちる。 これは お前 簡単茶の湯といってな早茶の湯という。 「これ ご隠居さん 飲むんですか?」。 「ヘヘヘ ご隠居さん お先に どうぞ」。
「まねするやつがあるか!」ってんでねさあ これから2人で 「風流だ風流だ」って毎日やってたんですがたまりませんことには青黄粉とムクの皮の煎じたやつ 毎日飲んでんですからね。 「でも そういう長屋の人に… 来て…『ご隠居さん お流儀が違いますよ』なんてっと恥ずかしいからな」。 店子なんか追ん出しちゃって『出てけ~』って追ん出してってんで 小僧さん 自分が飲まされんのつらいもんですからね手紙を3本書きますとお長屋へ持ってきた。
隠居さんはね 月末になってお菓子屋さんの付け見て びっくりしたんだ。 すると お芋で 黄ばみが かかって黒砂糖と蜜でもって灯油で 照りが かかっててもう 見ると実に うまそうなものに見えるんですが口に入れたら大変なことになる。 これを利休饅頭って勝手に名前を使ってお茶室へ出してると 正直なもんでねご近所の方が誰も来なくなっちゃったんですよ。 蔵前時分からのお友達が ひょっこり お見えになって「あの ご隠居さん ちょっとつかぬことを お伺いいたします。