日本の話芸 笑福亭銀瓶 落語「寝床」

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この番組のまとめ

で まあ ここにございました大家の旦那でございますけどもこの方は 至って 浄瑠璃 義太夫の好きな方でございましてねまあ 浄瑠璃… 落語の方の見台と浄瑠璃の見台とはもう 大違いでございますな。 ええ この大家の旦那まあ お金と時間がございますから稽古屋さんで 浄瑠璃を習う。 というのが あの肝心の浄瑠璃好きの提灯屋へ知らせんのコロッと忘れよってな あのあと道端で 提灯屋と ばったり会うたらえらい小言や。

まあ しかしこないだといい 今日といい提灯屋よっぽど運のないやっちゃな あれ。 また 別の日 提灯屋だけ呼んでそういうわけで 今日は ちょっと寄してもらうことはできません。 高野山の万人講の世話方をしておったんでございますが向こうで えらいもめ事があったんやそうでして明日の朝一番に 高野へ行かないかん。 今日は 旦さんの浄瑠璃の会ですがな』言うたら『あ~ そうやったな。

特に 旦さんのようにお上手な方の浄瑠璃これが 一番目に悪いんやそうでございます。 悲しいところで涙が じゅわ~っと出てまいりますとこの浄瑠璃を聴いた時のじゅわっと出る涙は日頃の涙より 塩分が濃いんやそうです。 朝早うに起きてきはりまして『家の周りをカラスが ぎょうさん飛んでるがなんぞ あんのんか』とおっしゃいまして『旦さんの浄瑠璃の会が…』と言いかけたところで『あ~ そうか』と おっしゃいまして荷物まとめて ボンの手 引いて里へ帰らはりました」。

町内の者も 是非とも旦さんの浄瑠璃を聴かして頂きたいと皆 集まっておりますのでどうぞ中止てなことをおっしゃらずにやって頂くわけにはまいりまへんやろか?」。 「そのご立腹は ごもっともでございますがまあ とにかく 皆が『今晩 旦さんの浄瑠璃 聴けなんだら寝られん』と芸惜しみを なさいませんように」。 いやいや まあまあそら 語ってもええかなと思いかけましたがなしかしな 『生涯 浄瑠璃語らん』ちゅうたんじゃ わたしゃ。

「あっ 『御簾内』いうたらね 旦さんが浄瑠璃 語ってまっしゃろ?その前に『御簾』いうてねこう すだれみたいなんが一枚 下りてまんねん」。 「つまりね ここの旦那の先祖が昔 浄瑠璃語りを絞め殺したんやろな。 旦さんの浄瑠璃でこの声の高なるとこねあれは 絞め殺された浄瑠璃語りの断末魔の叫びやろな。 この浄瑠璃は 私が聴きます』。 「皆 聞きなはったか?親子別れの浄瑠璃やで。