古典芸能への招待 歌舞伎「め組の喧嘩」

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この番組のまとめ

それから 世話物の方については残酷な場面や わい雑な場面を社会全体も 維新以来 どんどん近代化が進んでいたような時代ですよね。 明治22年には大日本帝国憲法が発布されて洋風の建物として歌舞伎座が造られました。 一方ではその時代でも 30歳以上の方は みんな衆議院選挙の時でもですね ちょんまげで当選した人が一人だけいましてそれが実に 東京府東京都の選出議員だったんですよ。 で 1つのプライドはですね役名が重要なんですが浜松町の辰五郎っていうんですよ。

しかし 辰五郎 実は力士たちへの命懸けの仕返しを決意して見物客を巻き込まないように相撲がはねるまで こらえていたという そんな場面ですね。 で もう一つはこの場での見どころはですね子どもの又八というのに「水をくれ」と言って別れの水盃をするんですけれどもそこで 一杯飲んだ辰五郎が……と言うんですけれども これは別に名セリフでも何でもないですけども非常に耳に残るセリフで有名なセリフという以上にこういう さりげないセリフがいいのが世話物の魅力であり歌舞伎の魅力でありあるいは演劇一般の魅力かもしれません。

遊びにくりゃ田楽の豆腐にあやかる二本差しも化物じみた大野郎が踊る隣りの騒ぎよりこっちの膳の燗徳利が踊って転げる騒ぎとなりなんぢゃ 隣りの客だとな。 痩せても枯れても力士をとらえ大道臼との悪口は力士もへちまもあるものか。 わしもさっきの悪口に腹が立ってなりませぬゆえもし旦那がたどうか御了見なされて下さりませ。 もし旦那 鳶の者も角力取りも同じ人間の事だからそれでは旦那 若え奴らの間違えはどうかご了見なすって下さいまし。

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宇多川町の長次と露月町の亀は角力へ行くと内を出ましたが芝居へは誰も来やァしません。 お角力がはねてからお角力衆はお出になりましたが組合の衆は存じません。 これからは角力取が相手だよくも喧嘩を買いやがったな。 お出入り屋敷の旦那がござれば屋敷へ知れても面ばれに角力や芝居で言いたい三昧見るに見かねて買って出た。 以前の名前は水引清五郎今改めて九竜山まだ二段目の七枚目その水引が春場所から篭目の纏は焦がすともこの消口は取らにゃァならねえ。 角力と鳶の達引は 盛りを競う遅桜。

大道臼に又ちゃん何故おっかァと一緒に行かねえのだ。 日蔭町まで行ったんだがつい先で話をされ半刻ばかり遅くなったがよくおとなしく待っていたね。 数寄屋河岸の親方にだいぶ沙汰になったから半次は間抜けな奴だな。 行く空の 日蔭くもりし春の末 思案に暮れてわが門へ 立帰りたる辰五郎お仲 今帰ったぜ。 案じられるから後をつけ 門にかくれて八ツ山下の喧嘩のことから大丈夫だから。 胸も張りさく辰五郎 無念を耐えしどもなく 呑めぬ酒の 酔いにまぎらしああつべこべとやかましい。

他人のことでも組合のためとなりゃァ火の中へも飛び込むふだんのお前の気性め組ばかりか二番組で喧嘩でひけをとらねえ兄貴いま姐さんの言う通りまだ三十になるかならずで 負けぬ気性の男気に 辰五郎は耳にもかけず 歳よりませし 気てんものちゃん 水を持ってきたよ。 命をきりに亀右衛門が又 来や。 若え時から一方ならず世話になって兄弟同様たとえ相手が角力でも命をきりに一番やる気だ。

数寄屋河岸の帰りがけ日蔭町のお店へ寄って番頭さんから借りてきたんだよ。 とりつきすがれば鬼神にも 思はずこぼす一雫ここの空地にいられねえから日蔭町の石竜師の庭もついでに貸して貰ったんだ。 石竜師の先生は この喧嘩は末になると必ず大きくなるといって易を見ていたからは。 当時江戸で一 二を争う名におう芝の石竜師きっと当るに違えねえ。 かねの鉢巻襦紙で組合総出で二ヵ所に別れ。 呼出しの音松が日蔭町で鳶の者に突き当られた上ぶん殴られ這々の体で帰ってきたが。