♪~腰元彫りというのは刀剣 刀の「つか」ですとか「つば」 「さや」なんかに細工を施す職人でございますな。 名人の名をほしいままにいたしまして浜野矩康50を2つばかり出て亡くなったと伝わっております。 あとを取りましたのが一人息子の矩随という男で。 政治家の世界とか 差し障りがあるので名前は控えますけれども。 実名は はばかりますのでイニシャルで ご勘弁を頂きたい。 林家S蔵師匠ですとか林家S平師匠という。
「おっ母さん 風邪気味です。 お前 若狭屋さんで何かあったね。 私 今日 あの… 河童を彫り上げましてお持ちしたところ狸だと断じられまして。 よろしいんでございます河童狸ということで落ち着いたんでございますがなぜ言うことが聞けないんだ』と出入り止めを言い渡されました。 なんという孝行息子だと思ったけどどのぐらい不器用な子かというのを分かってる。 若狭屋さんのおっしゃるとおり死ぬよりほかないと思い定めましてございます」。
お父っつぁんが彫りたがっていた観音像。 三日三晩 木肌と にらめっこになります。 裏庭に飛んで出まして着物を脱いで 井戸水をざぶりざぶりと かぶりまして改めて 着替えをいたしまして波の花 塩をひとつまみ 口の中にぽ~んと放り込むと改めて 刀を振るい始めて更に三日三晩でございます。 あっ 行くのはいいんだがちょっと その前に お前ね七日七晩 何も喉を通ってない。 えっ 早速彫れた?拝見しようじゃないか。
で 一度しくじって七日七晩… はあ はあ はあ。 うっかりすると おっ母さんもう生きちゃいないぞ おい!誰か いないかね?早駕籠だ 駕籠をあつらえろ!」。 エイホッ エイホッ エイホッ エイホッ。 あの若狭屋さんにです。 観音像 30両 50両出すとまでおっしゃって頂いて…どうか そのひと言を聞いてからでも遅くはないでしょ。 若狭屋に すばらしい出来栄えの観音像があるらしいといううわさがうわさを呼んでさる目利きが お忍びで来てこれをじっくりと見て「いい品である」ってなことを言う。