♪~ゲストは 大阪樟蔭女子大学 名誉教授の森西真弓さんです。 これも やっぱり 上方和事の一つですので恋する柔弱な二枚目が登場しましてその柔らかみとか 色気といった味があるんですが特に この作品は 喜劇性がとても強いのでご覧になって面白いと思います。 今回は主役の五郎七松本幸四郎さんが 初役で挑まれますね。 幸四郎さんは これまでも上方歌舞伎に大変興味を持って森西さん ありがとうございました。 温泉宿の裏手で髪結床を営む五郎七に思いを寄せている様子。
そりゃもう 内のお部屋様位御器量のええ女子は京 大坂にも滅多に おまへん。 親方 イヤイヤ 一寸出んとな もう すぐに引張り出しに来おるよってえっ あのべっぴんのお部屋はんが書かはった。 親方 わても一寸お詣りに 寄せて貰ろうても宜敷おまっしゃろかな。 あのお部屋はんが 丸窓あけ此の扇か どの扇がそりゃ 一寸 分からんけれども扇を口へあててうちの店を… っと見てはった。 一生懸命 お客さんのお仕事しよってなんの気なしにふっと二階を見上げると向うも わしの顔をふっと見てはった。
浮線蝶はナ アリャサ 浮線蝶は あれは幸四郎さんの定紋じゃ一寸。 一寸 五郎七さん。 一寸 五郎七さん 一寸。 もう そんなこと云わんと 五郎七さん一寸 表へ出て来ておくれやすなァ。 よしよし 一寸待って。 あのな 実はな 先刻 お部屋様と御一緒に此の店の前を通ったんやけどなあんたは留守でツイ あんたの顔見やぬに依ってお部屋様は 気落ちなされてお熱は上る。 それを見かねたお供の衆がわてを呼んでこの文を 五郎七さんに渡してくれと今 頼まれて来たのでござんすわいな。
エサエ エササのさ 恋の痴話文ナ 鼠に引かれ 猫を頼んで 取りにやる ヨイヨイヨイ ヨイヨイヨイのヨイ 舟の船頭衆はナ 何着て寐やる 苫を敷寐の梶枕存外と云うのは お部屋の事じゃ。 エ ナニナニ「五郎七様参る 焦るる司より」。 なんと お部屋様から。 御部屋様。 五郎七殿に渡そうなら私が部屋の すぐ窓下方々では有るわいなァ。 お部屋様には御休息を。 申し 五郎七殿。 お部屋様には 先づ。 此後共 慎しむべきは色の道再び斯様な不都合を働かぬよう返す返すも 心をつけよ。 五郎七さん 堪忍して下されやァ。