これが3代目店主の堀田勘一私の夫ですこれは孫の藍子とその娘の花陽藍子はシングルマザーで日本画を描いていますが今のご時世それだけでは食べて行けずフリーライターをなりわいにしていますがやはり稼ぎはほとんどなく店で勘一を手伝っています花陽ちゃん気をつけてよ。
あっLOVEだね!青!青~!何がLOVEだよ。 イェ~イ!青お前の言葉はね何かLOVEじゃないねぇ。 まず帰ったら「ただいま!」「おかえり~!」ってそれが家族のLOVEなんだねぇ。 …ったくいつもLOVEって「LOVEだねぇ」って。 LOVEとか愛とかそういうことを軽々しく口に出す人間なんてろくなもんじゃねえっつうんだよ。 フフフ今日もにぎやかです私もまだしばらくはこの世界で堀田家の『東京バンドワゴン』の行く末を見守って行きましょうかね♪~禁酒。
何よ!何なのよ!奥さんとか全然聞いてないし!散々甘い言葉かけといてこれって何しかも先祖代々続く自慢の店ってこの…。 添乗員ってさ評判悪いと仕事干されちゃうから。 でもあなたもう1時間半以上この辺います…。 大学の名前付いてたから直接図書室に持ってこうかなとも思ったんだけど。 あっでも実家古本屋なんだ。 あっ!そうそう自分禁酒しました。 俺のファンケンちゃん。 いいのいいのそこから努力して今立派に社会復帰してんだから。 実は学生の頃から我南人さんのファンでこれおじいちゃんのお下がりなんだ。
百科事典?おうよ覚えないか?いや俺が知るわけないでしょ店の本なんて。 ねぇ青ちゃん今月仕事少ないってホント?それがホントなんだよ。 『東京バンドワゴン』の4代目は堀田青が継ぎますよっと。 まだ大丈夫よ勘一さんとても元気じゃない。 あら大変消毒液と絆創膏。 あら?研人と花陽の目がキラッキラ輝いていますよねぇ大じいちゃんその話なんだけど…。 名前は大町奈美子ちゃん近所の第1マンションに住んでいる1年生。 毎朝学校の前に家に来て百科事典をこっそり2冊置いてくの。
違うよ!小っちゃくて軽い奈美子ちゃんは百科事典を持つと重くなるんだよ。 奈美子ちゃんが重くなりたい理由は分かった気がすんじゃんだからその原因?原因が分かんねえってことよ。 はい!えっ?奈美子ちゃん!そうそう…最近の人が近づくとセンサーが反応して開く自動ドアと違ってあのマンションはマットを踏んだ圧力でスイッチが入ってドアが開くタイプのやつなんだよな。 う~んじゃあつまりこういうこと?奈美子ちゃんは体が軽くてドアが乗っても開かなくてそれで体重を重くするために百科事典を持ち歩いていたと。
あっはい何でしょう?あの奈美子ちゃんってさ女の子知ってる?はいうちのマンションの大町さんの。 何十年も逃げ回った俺は一体何て人間なんだって…。 LOVEだね!何でいいきなり。 いや捨てる男も捨てられた家族もさ傷ついてんだよな?傷を癒やしてふさぐのもねLOVEっていうこの絆創膏しかないんだよ。 そりゃ奈美子ちゃんは確かにかわいそうだけどさ悪いけどそっちの人はどう思われたって自業自得だろ。 というかさ親父みたいな親に親の気持ちなんて語られたくないね。
「憂悲苦悩」は仏教の言葉じゃありませんでした?そうだっけ?花陽!「私のお父さんって誰なの?」って言い出したんです。 花陽ちゃんいなくなっちゃった。 花陽のそのかわいい顔もさすら~っとしたその体もキレイな心も全てが藍子とその見えないお父さんのLOVEで出来てるんですよ。 LOVEこそ全てなんだよハハハ…。 おう!よしバトンタッチ!おい!花陽心配したぞ。 玉三郎LOVEだねぇ。 LOVEだねぇねぇ?LOVEじゃないねお前…。 ♪~けなげに咲いてる♪~ありふれた花♪~花陽私ね…。
他に♪~何が必要だっていうの?♪~「LOVEこそ全て」かぁ。 ♪~サーチライトに僕はなれるかな?なれるかな?♪~怖くて寒くて眠れなくなって♪~誰かの胸を探した夜に♪~必ず君を照らす♪~サーチライトに僕は♪~なれるかな?なれるかな?♪~信じてるセンキュー!我南人!我南人!はぁ。 みんな!LOVEだねぇ!LOVEだねぇ!ハハハ。 古本に並々ならぬ愛情を持って商売をしていることがこんなにも伝わって来る店の店主に向かって全部売ってくださいなんてそんな失礼な話ありませんでしたよ!本当に…本当に失礼しました。