お世継ぎを生み 上様のお心をつかむ女は 誰かその女を上様の元に 差し向け政治の実権を握る 老中 執政は 誰か表の世界では そのための 駆け引きが日ごと 夜ごと 慌ただしくなっていきましたこれは その謀略の渦に 翻弄された美しき姉妹の お話にございますその方 名は?馬廻り役 島田 帯刀が娘 かよにございます。 つまり 上様のお心しだいでは梅さまか 歌さまの どちらかが ご側室に選ばれ大奥に 上がられるということで ございますね。
大奥に 参るのじゃ。 小普請方 酒井 忠康が娘 梅と申します。 こうして お梅の方さまは 上様の ご側室としてはい。 あなたさまのような 誇り高い お方が何故 大奥に入ろうなどと 思われた。 天下一の方の 天下一の妻に なろうと思うたのじゃ。 天下一の妻?家斉公には 寔子さまという ご正室がおられます。 酒井 忠康さまは 中野 清茂さまの お引き立てで500石の ご加増だそうですよ。 沙羅双樹の花の色。 盛者必衰のことわりをあらわす。
歌 一大事じゃ!いかがされました?上様の ご所望じゃ そなたを 奥へ上げよと。 分からぬ! じゃが 取り次ぎの 中野さまの仰せではこれは 上様の おぼしめしじゃと。 上様?姉上の元には 決して行かぬと。 私が 上様に お世継ぎを生んでさしあげまする。
そうでは ありませぬか?のう? 上様。 上様!そのような 怖い顔をいたすな。 私の体に 障ることは 上様のお子に 関わること。 私という者があるのを知りながら 上様と…。 上様を わが身 一人のものに したかったのか?それは 無理じゃ 歌。 ましてや 上様は あのような お方。 上様のお心を お引き留めしでかしたぞ 梅!余のために 世継ぎを生んでくれ。 上様に お知らせを!邪魔じゃ! 上様!おさじじゃ!おさじ… おさじって…。
下総の智泉院は安産の御利益で 高名な お寺にござりまする。 歌は どこにおる?下総の智泉院に お参りに 出掛けておられまする。 上様!失礼いたします。 世を捨て その煩悩から救われたいそう思うて 仏門に 入りましたのにこうして また お目文字するとは何と 業の深い わが身でしょうか。 お広敷?寺で 坊主と密通しておった? 本は 酒井家の うまや番大月 兵吾という男にございます。 なれど お付中臈 松風が 見ていたことが 何よりの証拠。