これは 戦後の復興期 昭和20年代を華々しく生きた一人の女性の物語であるその名は 大庭 式子船場の裕福な商家に生まれ 戦災で 身寄りを亡くすも自らの力で 洋裁学校を設立ファッションデザイナーとしても 活躍の場を広げてゆくその裏には 辣腕の補佐役 八代 銀四郎の存在があった権力を拡大してゆく 銀四郎それぞれ 野心を抱きながら出世の階段を 上っていこうとする女たち入り乱れる思惑 絡み合う欲望が大庭 式子物語と言い換えても いいような気がするんですが。
白石教授と?あの先生にも 困ったもんや。 東京の十大デザイナー・ショウ 先生の評判も 上々ですな。 何が言いたいの?パーティーを抜け出して白石先生と 会うてはったそうだすな?ずいぶんと 仲がおよろしいや おまへんか?変な言いがかりは やめて。 先生は 真面目な方よ。 先生 うちの 大庭 式子から 手を引いていただきたいんだす。 先生のような清廉潔白な方に 下心があるやなんて思うてまへん。 けど 近ごろの大庭は先生に 大いに 影響を受けてることは確かだす。
私は何番目ですか?倫子さん かつ美さんの次やから 3番目?それとも 式子先生も入れたら 4番目ですやろか?かつ美さんが仕事の用やて 嘘ついて よう出掛けはることも全部 お見通しですわ。 お二人とも 安い取引で私は 洋裁学校の校長や デザイナーになることなんか何の興味もあらへん。 有名デザイナーかて ええときは ええけど浮き沈みの激しい 人気商売です。 その点 縫製工場はいったんできたら 確実な商売になります。
先生のデザインした うちのオリジナルの洋服をこれに はんこを押したら もう あんたのもんや。 野本さんに?実は 今度先生が ランベールの型紙を買いに パリに行かはるんです。 どういうこと?なぜ あの人が あなたに?倫子さんも かつ美さんも銀四郎さんと 裏で つながってはります。 銀四郎さんと関係して その見返りにもらえるだけのものをもらって 働いてはるんです。 銀四郎さんの手腕を借りて欲しいものを 色々手に入れて きはったんやないんですか?うちが もらったものは その ほんのおこぼれです。
白石先生 パリにいらっしゃるんですか?ちょうど 学会の発表が来週で…。 新旧交代… 年寄りは去れってこと?はい 日東貿易です。 大庭さん ランベールの秘書の ポール・ミシュレさんです。 ご承知のように 日本では うちが独占してランベールの今期の コレクションの型紙を購入する 手はずになっていたんですが…。 つい昨日 日東貿易の代理店が3年契約を 申し込んできたそうなんです。 早い話が うちと日東貿易を 競り合わそうという腹なんですよ。
学会が済んだら あさってはロンドンに向けて たたねばなりません。 ロンドンに?ええ。 親交のある オックスフォード大学の教授から蔵書を譲り受ける 約束をしてるんです。 私は先生といるときだけ ホントの 自分になれる気がするんです。 一刻も 早 日本に帰ってそれに 仕事 頑張ってるのは 先生だけやあらへん。 先生!いつまで 寝てはるんですか?打ち合わせ 行く時間だっせ。 私が好きになった人は 先生お一人です。 パリに戻って 飛行機で ロンドンにたつことになりました。 ロンドンに?なら 私もお供します。
この30着を縫製し直しさらに 私がデザインした 30着を加えランベールと 大庭 式子の祭典としてファッションショーで ご覧にいれます。 確かに 最近の式子先生はデザインや型紙と いちずに格闘しはってはたから見てても 怖いくらいです。 どないなやり方だす?アコヤガイの口を こじあけてその生殖巣に ドブガイの核やらを ねじ込んでかごに入れて 海に沈めとくんだす。 アコヤガイは 異物を受け入れようとして必死で 膜を張って 作りとうもないのに真珠だけ出して あとはポイや。
東京 銀座で初日を迎える 今回のランベール・ショウはうちの学校… いや大庭 式子を 東京に進出させる足掛かりや。 担保? 債務? 何のこと?まず 大阪校には2,000万円の学校債券の 債務が掛かってます。 それから 京都校だすけど ビルの持ち主と提携して教室面積と器具設備を 担保に入れてつまり あんたが 今 僕にくれはるつもりのもんは全て 債務を負った 担保物件ばっかりで清算勘定には ならしまへんのや。