[しかし…][1年生およそ40名の中から選ばれたのはわずか数名のみ][選抜メンバーの練習は過酷を極めついていくだけで精いっぱいだった][主務とはチーム運営全般を引き受けるマネジャーのこと][キャプテンと並ぶ重要な役職だ][慶應大学ラグビー部では学年ごとに選手同士の投票で選出する][しかし選ばれると通常より早期に引退することに][選手にとっては戦力外通告に等しかった][大学日本一からやがては日本代表へ][杉田は夢へ向かいまい進した][そんな中…][合宿も終盤にさしかかった8月26日][強豪関東学院大学との練
杉田に駄目出しされていたあの落合陽輔だった][杉田がラグビー部を離れた後落合は不断の努力を続けた][そして迎えたノーサイド][結果は10対8][早稲田の猛攻に耐え10年ぶりに慶應大学が勝利したのだ][あの悲劇からおよそ3年][ケガにより全てを失った杉田秀之は新たな人生を歩みだすスタートラインに立った][チームはその後日本一を逃すも杉田はかけがえのない1年を過ごすことができた][そして同期から遅れることおよそ1年半][慶應大学を無事卒業][すでに卒業した同期も祝福に駆け付けた]世界的な金融企業に就職][この
[10年前に杉田と監督が交わした富士登山の約束ははい![日常生活は送れるとはいえ体には…][歩くのにもつえが必要でこれ以上劇的な改善は期待できない][登山などとてもできるような体ではなかった][体にはまひが残っている][冗談ではなく誰もが本気だった]応えるために][杉田はあるメッセージを竹本に送った][そして昨年3月]杉田と近い学年の代にも声が掛けられた][また決行日はワールドカップによるトップリーグの中断期間も踏まえあの約束からおよそ12年後の2019年8月23日に決まった]登山に必須の動作は難しい][
[付属高校時代からラグビー部の同期][杉田のラグビーに懸ける思いの強さを誰よりも知っていたからこそ杉田のケガで受けた衝撃も大きかった][その後4年生で杉田がラグビー部に復帰したときも…][それは自分は…][落合は杉田との関係の修復を本当の意味で達成するため登山に臨んでいたのだ][そして登り始めておよそ1時間][翌日の午前中まで天候の著しい悪化が予想されたため日曜日の早い時間に帰路に就かなくてはならない者もいる][そのため日程をずらせばかなりの人数が欠けることに][おそらく二度とこの人数で集まることは不可能