えーミステリーの専門用語に「アームチェア・ディテクティブ」という言葉があります。 それでいくと今回は「アームチェア・マーダラー」一歩も犯行現場に踏み込むことなく完全犯罪を成し遂げようとした男の話。 等々力さんに宅急便が届いてますが。 よかったら今夜ドームの試合一緒に行きませんか？確かジャイアンツファンでしたよね？今夜はやめておきます。 はい等々力ですが。 勉強熱心な研究員は家にも実験室を持ってるし。 等々力も「それ用に部屋を改造した」って言ってたし。
実験中に大爆発を起こして研究室を吹っ飛ばしたことが。 あのですねこちらで扱ってらっしゃる爆発物なんですけど主にどういったものがあるんでしょうか？ビルのひとつはふっ飛びますね。 ダイナマイトの原型ですから。 事故じゃないんですか？どういうことですか？殺人の可能性もありまして。 「トイレ」？爆発はトイレで起こってるんです。 しかしですねトイレに薬品を流すにしてもやっぱり手袋はしますよね？当然です。 警察は「殺人の可能性もある」って言ってた。
等々力と僕と彼女は大学時代からずっと一緒にやってきた仲なんです。 ちょっと待ってください！あなたが地下鉄の保管所に取りに行ったという書類はこれじゃないんですか？「新製品『ケミカルピット』の基本構造とその将来性について」どうしてこれがこのデスクの上にあったんですか？知りません。 あなたは「等々力さんが論文コンクールの審査会から入選を知らせる電話を待っていた」とあなたおっしゃった。 だから彼が残ってあなたが代わりに？しかし実際に審査会に問い合わせたところ等々力さんの論文は予選すら通過していない。
外にいた彼女が等々力がトイレに入るタイミングをどうやって知ることができたというんだ。 その一点から考えてみても彼女に等々力を殺せたはずはない。 等々力さんは受話器を持ってトイレに入っています。 だから？彼女は表から電話を掛けて等々力さんをトイレに誘導したんです。 いいですか？もし等々力が死んだあと「部屋が火事になっていた」としたら？彼の部屋には研究用の資料や彼が書き留めたノートが山ほど置いてある。 等々力さんの部屋にありました。 等々力さんは資料を全部昨日のうちにこのオフィスに送り付けています。