[江戸は秋でございます][ひところは残暑が厳しく大いに閉口したのですがこのところ朝晩はめっきりと秋めいてまいりました]一子秋山大治郎の道場を訪ねたのだが…]大治郎さまは朝からお出掛けになられていてたぁ…いってぇ。 ああ以前剣術の修行で諸国を回っているときお前が江戸に帰ってから初めて会ったのか?江戸に戻ってからは文を交わしておりましてこの橋場道場のことも書き送りました。
《大治郎殿のお父上の秋山小兵衛殿は今は世に隠れてしまわれたそうだが《もし江戸に行く折があればその浅岡鉄之助のことは友である大治郎に任せようではないか。 けさ湯島の金子孫十郎先生の道場へ稽古に伺いますと食客の師範代浅岡鉄之助さまと手合わせをしまして私の腕を大層褒めていただきました。 その浅岡師範代はご自分の友である秋山大治郎さまに引き合わせたいなど申されたのです。 私が解せぬのは浅岡さまがどうして大治郎さまのことを口になさったのかということなのです。
出羽国本庄藩六郷家江戸屋敷で武具奉行を務める西山団右衛門というのだが男児がおらぬ。 養子となればいずれは西山家の家督を継いで六郷家の家臣と相成る。 これには団右衛門も鉄之助ならば申し分ないというのだが《ですが《いやいや娘は何も《ただ体つきが他の娘御よりは縦にも横にも浅岡鉄之助はその娘御と会ったので?見合いとは言わず団右衛門親子のキキョウ見物の供をするという体で同行させたのよ。 団右衛門によれば鉄之助と千代乃の話は大いに弾んでいたらしい。 浅岡鉄之助と申します。 先生西山団右衛門さまの養子の件…。
その女が言うには顔を隠した盗っ人どもは昼間下っ引きの与吉とあっしが見たときは百姓家から浪人が2人出てきやした。 千代乃さんはな5年前に亡くなった母親の代わりとなって父親を助け支え合って今日まで西山家を切り盛りしてきた頼もしい人なんだよ。 いや~しかしなぁ大治郎殿を差し置いて私が先に祝言を挙げるというのはこれはちと心苦しい。 ゴボウにニンジンダイコン。 [鉄之助がなぜ浪人どもに付け狙われるのかは大治郎殿がお目にかかりたいと申されておりますが。
探索の足しにってことですが若先生からこんな大金頂くわけには…。 なぁ~に若先生のやり口がここんとこだんだん大先生に似てきなすってあっしはうれしいんですよ。 与吉若先生は潜り込みなすったと親分に。 湯島金子孫十郎道場の師範代浅岡鉄之助。 ふん!浅岡鉄之助に弟を斬られたとな。 平山市蔵はそう言いましたが私が大坂にいた時分奉行所に引き渡したそうです。 その後平山市蔵はさらし者にされ百たたきの刑を受けて大坂市中から追放されたそうです。
若先生?[この日小出家から浅岡鉄之助に出稽古の要請があった]では明後日下屋敷へおいでくださるよう。 例の浅岡鉄之助さまの出稽古があさってです。 のこった!帰るよ!こんなとこで遊んでたら連れてかれるよ![この日小兵衛が足を踏み入れたのは代々木村にある神社の境内であった]後金の三両は仕遂げた後に。 湯島の道場を出るとやつはいつも小石川の水戸家上屋敷の裏手を通って雑司ヶ谷の小出家へと向かう。 お主は何者だ?浅岡鉄之助の親しき友。