被害者の23歳のホステスは男関係が派手で捜査線上に上がった容疑者は100名以上。 月日が経つに従って捜査本部は縮小に次ぐ縮小で君の猪突猛進ぶりには舌を巻いたよ。 こちらは私の高校の同級生で警視庁捜査一課第二特殊班片岡悠介刑事だ。 死体遺棄現場は竹下町谷戸の資材置き場です。 勤務先の銀座オードリーは政財界の重鎮も通う高級店ですが末次茜は口先三寸まるで結婚詐欺師のように客の間を泳ぎ回りかなりの金銭を貢いだ客も多かった。 じゃあ捜査本部は当然水島を第一容疑者に見立てたんだろ?そこ右手アップしてくれ。
おいどういう目撃証言だよ?はい?犯行日時を2月17日だと断定するに至った証言だよ。 2月17日の夜死体遺棄現場の資材置き場の入り口に不審な車が止められてたのを7人もの通行人が目撃してるんです。 シルバーの外車で一番最初の目撃者が午後7時頃。 この捜査資料によればだよ大学生はタクシーを降りた直後に資材置き場の前に止まっていた車を目撃したって供述してあんだよ。 お前目撃者の供述書ってのはなどんなに細かい事でも記録するもんなの!いざって時に裁判でひっくり返されないように。
ほんとに最近の若い野郎ははいはいはいはいいつまでも困んだよまったくよ!はいはい!悠介蕎麦はまだか?はいはいただ今!熱燗遅ーい!はいはいはいただ今!あっちあっちあっち…!千人斬り?うん。 殺されたシモン直人ってカリスマホストだったんですよ。 1人5千円で飲み放題!さすがにドンペリとか高級ワインは無理でも5千円で飲み放題!ビールも焼酎も!あ~いいわいいわ〜!ねえねえ榎本さん行こう行こう!ああこんなホストでよろしかったらねあの指名料…5千円でいいですよ。
計算上だろ?親父さんその時飛ばした風船こうなんかこう…特徴はなかったですか?いえ1人だけ疑問を抱いてた所轄の刑事がいたんです。 それじゃあお前の親父さんは15年前の事件の捜査本部員だったのか。 犯行現場にもシモン直人のマンションの部屋にもこのビスクドールに関する本が何冊も残されてた。 ビスクドールっていうのはねフランス語の「ビスキュイ」「二度焼き」って言葉が転化したものなの。 人形にも命は宿る?元々はファッションを伝えるのが目的だったんだけど19世紀の初頭からモード雑誌が登場して廃れてしまったの。
水島はよ身寄りがなく女に食わせてもらってた画家だろ?そんな奴に捜査本部が圧力を受けるほど水島は肝臓が悪いのに病院を逃げ出したんだろ?はい。 茜さんの部屋に残された指紋は同棲状態だった水島のもんに間違いねえんだよ。 もし誰かのものと一致してしまったらこの事件どう決着するんです?まあ犯人は重要参考人のまま死亡って事で迷宮入りになるかもな。 おはようおはようおはよう!おい!どういうこったよ?こういうこった!ホストクラブディオスのオーナー沼田真由美は15年前銀座のクラブオードリーの雇われママだった。
そこで彼女が出資しているホストクラブの裏の仕事を斡旋し捜査本部が縮小された時期を見計らって…。 やっぱりシャルロットかしら…。 ビスクドール黄金期の19世紀末にフランスのピエールという名人がさる貴族に生まれた双子姉妹のために依頼されて作った名品で世界でたった2体しかないものなんです。 その彫刻家は晩年小暮ちとせ?海外でも高い評価を受けておられる人形作家です。 これが日本に持ち込まれたシャルロットのレプリカです。 本物のシャルロットはやっぱ赤い靴履いてるんですか?資料によれば2体とも黒い靴を履いてますが。
…となるとこれもシャルロットのレプリカなんですか?人様の鑑賞に堪えられるものではありません。 でも本物もお持ちなんですよね?ご両親から相続されたシャルロットを。 片岡さんの読みはこうですね?小暮ちとせは自分の命と引き換えに両親が手放したシャルロットに異常な偏愛を抱いていた。 だから精巧なレプリカも創作しいつかはシャルロットを自分の元に取り戻したいとずっと念じてた。 そんなちとせの元に水島大樹通称シモン直人がシャルロットを持ってるらしいという情報がもたらされた。
所有しているビルを大田黒康男事務所に安い家賃で貸すと同時に車も自由に使わせていた。 すると末次茜の同級生だった飯倉里沙子の夫飯倉英司は15年前大田黒康男の末席私設秘書だったというのか?ええ。 茜の本当の愛人は運転手兼秘書としていつも大田黒のプライベートな席に臨席していた飯倉だったのではないかと。 当時飯倉は大田黒のヨーロッパ外遊には同席しておらず2月17日には選挙地盤の青梅福祉まつりに大田黒の代理として列席しているんです。
今度はどこだ?「裏の山にいます」おやめなさい!返してください!何なさるの!?お願いします!返してください!離しなさいって言ってるでしょ!先生お願いします!離しなさいって言ってるでしょ!では先生どうしても返して頂けないのですか?里沙子!横山さんちにシャルロット忘れちゃったわよ。 だけれどね里沙子さんあなたにはシャルロットを持つ資格がないわ。 茜さんの関心を引きたかった飯倉さんはあなたの一番大切なものシャルロットを茜さんに渡してしまった。
これは俺の勝手な推測なんですけども茜さんを手にかけてしまったにも関わらずシャルロットを取り返す事が出来なかった。 なぜならシャルロットは水島大樹さんの元にあったからです。 しかし最近になってアンティークドールを特集する美術誌でそれが価値あるシャルロットだと知りその出所を調べて茜さんの親友だったあなたにたどり着いた。 茜はそんな大切なシャルロットの手足を貸してよ!やめて!やめて!やめて!こんなもの!こんなもの!それだけじゃない。