我らを紀州徳川家の者と知っての狼藉か香炉が目当てに相違ない！香炉を守れうちの野菜が！逃げるんだよ！箱を見つけたら紀州藩下屋敷に届け出るのだ。 これ香炉っていうらしいんだけどさ案外高く売れそうなんだ。 そんな心配しなくても例の香炉が高く売れる目星がついたんだ。 姉ちゃん本当かい？ダメよ！拾った物はちゃんとお返ししないとあとでお咎めが…！いいから！おまえたちは何にも心配しないで万事姉ちゃんにまかしときな！さあ！めしだめし！高麗青磁の香炉でございますな。
吉宗が八代将軍に就任したのち紀州藩は伊予西条藩主松平頼致を藩主に迎えた上様が親としてもの申されるならあえて言上つかまつります。 こたびの件が世間にもれれば香炉はまだ見つからぬか？渋谷川流域の百姓家をシラミ潰しに当たりましたが…。 その席に神君家康公より紀州家が拝領した高麗青磁の香炉を披露せよとの要請であったが…。 わずかな金子で言いなりになる貴公らではあるまい？いかにもっ！我らは同じ浪々の身である笹岡弥市に笹岡弥市ら五名は五日前紀州藩の一行を襲い全員返り討ちにあったそうだ。
ま江戸家老の次席ぐらいは承知してもらわんといけまへん。 たかが三十石の軽輩だった私が…江戸次席家老に？それはほんの序の口や。 甥である若君？お忘れかな？ではお舅どのは娘三人を殿のご側室に？たとえ殿様が嫌やと申されても香炉を盾に無理にでも承知してもらいます。 あの身体じゃあまだ遠出は無理よ！まだ香炉は見つからぬか？何をぐずぐずしておる？川浚いをしておりますればまもなく見つかるものと…！茶会の催しは迫っておるのだ！芝の町外れにある茶屋のじいさんに話を聞きました。