寺社奉行所大検使薄田任三郎にございます。 お奉行・駒井志摩守急病のため代理として参上仕りました。 三日前に日向屋を襲った盗賊“おぼろの藤兵衛”一味の捕縛のめどが立ちもうした。 では大岡様は一味の潜伏先を見事突き止められたのですか?もとよりそこは町方奉行所の管轄外。 寺社奉行の配慮を得ねば踏み込むこともできませぬ。 常日ごろ人の出入りや戸締まりは用心していましたが気がついたときには一味はもう屋内に…!となると一味は見取り図でも持ってたのかも…。
清次に家族はいるのか?小弓町にお浜って母親が。 あの子が…清次が何かしたのでございますか?清次とおぼろの藤兵衛一味とのかかわりを訊きてえんだよ。 あれは松五郎親分が誤解しているのでございます。 松五郎親分。 おぼろの藤兵衛一味をお捜しで?なにい?おぼろの藤兵衛だとおいっはて…?一味の者と寺社奉行とのかかわり合いといえば薄田任三郎が越前殿に便宜を…おおっあの男が一味と気脈を?…とすれば踏み込んだおり寺が空だったわけもわかります。
だが菊乃にはどうしても清次と一緒になれない事情があった。 気持ちを改めもう一度やり直しておくれ〕俺は命かけてたんだよ〕〔お前!こんな大金どこで…?〕〔“おぼろの藤兵衛一味”ってのを聞いたことがあるか?〕〔今…お江戸を騒がせてる盗賊だろ?どうしてそんな…〕〔清次!お前まさか〕〔俺が藤兵衛に渡す見取り図が連中のお役に立ってるんだよ〕〔それだけじゃねえ。