そのころ江戸市中は謎の盗賊“夜鴉”の噂で持ちきりだった火の用心!火の元用心なされまし!あ~ついてねえや。 行こう!火の用心!♪~待てい待てっ!待て~っ!神妙にいたせっ!聞いたよ!聞きました~っ!お前たち昨夜夜鴉がお役人を殺した現場にぶつかったって?「蛇の道は蛇」だよ。 夜鴉の正体まったく不明なのか?盗んだ場所に必ず鴉の羽根を一枚残しておくところから“夜鴉”と呼ばれたそうですが大坂奉行所に捕らえられた一味の一人が頭目の名を“仁兵衛”と吐いたところから“夜鴉の仁兵衛”と…。
ただいま!あ!あんた!ねえ皐月ちゃんよ!ほら!紀州の組屋敷で一緒だった…!ああ…あの泣き虫だった。 紀州吉宗様が八代将軍に決まったとき紀州忍びの大方は公儀お庭番に取り立てられ江戸へ行ったが紀州に残された俺やおゆうの家は淋しかったぞ。 でも吉宗様は伊予西条から紀州に入られた新しい藩主の松平頼致様のためにあんたの家の柘植家を頭に忍び七家を残されたと聞いてるよ。
二人とも仁兵衛さんには恩義があるもの。 現北町奉行間垣帯刀殿にございます。 盗賊・夜鴉の仁兵衛の一件はもちろん私が大坂町奉行時代に手がけた事件でございます。 しかし五年前寸前のところで取り逃がしたあと奴らの手口や捜査経過を伝えるべきではなかったのか?何とぞ私めにおまかせのほどを。 早速一網打尽にしてください!上様のご判断は?絶対に許さぬ!…だがその前にどうしても悪の道から連れ戻さねばならぬ者がいる。 才蔵とおゆうでございますね?あの二人の悲劇は俺の従兄弟の紀州藩主・頼致に端を発している。
明日八つ半刻ごろ店を辞し淀屋の才蔵のところへ戻る予定と申しておりました。 明日の二人の役目は昔の友才蔵とおゆうを悪の道から連れ戻すことだ。 きっと…きっと…!問題は紀州藩に深い恨みを抱く才蔵だ。 なんだ?夜鴉から抜けてくれ!今夜の備前屋押し込みはもう南町の大岡様が…。 才蔵!それは違うぞ!…何が違う?どうせ今の俺は綺麗なお前たちとは違って汚れた泥棒稼業だ!才蔵。 〔女房どのに子供が生まれるようだな?〕嘘だ…嘘だ!嘘だ!天下の将軍がそんなことをするはずがねえ!それをなさるのが吉宗公なのだ!才蔵。