♪～全焼は小石川養生所一帯約一町歩。 だが問題は大島屋文右衛門。 なに？大島屋文右衛門が死んだ？あの「今紀文」と言われた材木商の大島屋にござるか？はい。 大島屋は数年前に店を閉め猿若町で隠居しておりましたが今朝方急にと…。 大島屋は「上様」や「お大尽」と謳われた紀国屋文左衛門と同じ紀州の出。 文右衛門は長年に渡って江戸再建に尽くしてくれた男だ。
しめて…百六十二両二分三朱とんで八文。 では逆に少なくありません？そこが信用ですよ！大島屋文右衛門隠居したとはいえまだまだそれぐらいの顔はある。 どこへ棺桶に決まってます！某は南町奉行・大岡忠相。 上様から香典をいただいてしまうと上様までだましたことになりませんか？…あ！えっおそれ多くも上様から金子をだまし取ってしまったのですよ！生きていただなんて言えないじゃありませんか！あ～！こんな物もらったらもう生きてましたなんて言えない。
だが大島屋がめ組とやらに身を隠したとなるとなかなか手を出せぬな…。 この者は大島屋が隠居のおり店を継がせてもらえず恨みに思っております。 「今紀文」と言われた大島屋さんにお恥ずかしいかぎりですけど…。 お前いったい？どうして…？大島屋に知られたからはお前がいては足が付く。 だが大島屋に対する恨みか…。 しくじりはしたが大島屋は死人じゃ。 それが今朝手前どもの店に大島屋の女房が現れ亡き夫の代わりに入札に出ると申してまいりました。 出るのは女房でも絵を描くのは大島屋。
すまんが一肌脱いでくれんか？お前さん！ここが男の見せどころだよ！わかりやした！このめ組の長次郎旦那の名代立派に務めてご覧に入れましょう。 支度してくれ！新さん！頭！大変だ頭っこ…これ！何でい？騒々しい！これを見てくださいよ！頭っ！て…てえへんだ！みんなが…香典代を！大島屋はどこだ金返せ！いつまで待たせやがんでい。 まったく！俺はなあ亡くなった旦那の代わりにこうして来てるんだ！それを勝手に…！何笑ってんだいたわけ！なればあ奴はいったい誰だと申す？世を欺き神聖なる入札に加わろうとは言語道断。